ジェネリック薬(GE薬)をめぐっては、2017年央に70%、18年から20年度末までの早い段階で80%の数量シェアに引き上げる国の政策目標が打ち出されている。同学会では、GE薬数量シェア80%目標の達成に加え、今後の重要な活動の柱の一つとして、バイオシミラーの使用促進を掲げている。
ただ、GE薬に比べ、バイオシミラーはたったの数成分しか販売されておらず、本格的な浸透には時間がかかりそう。武藤氏は、バイオシミラーの品質や信頼性確保の前に、「バイオシミラーが国内で売れる市場環境をつくり、企業参入を呼び込んでいくことが前提になる」として、学会として政策提言を行っていく構えだ。
その一つがバイオシミラーの自己負担率の問題だ。本来、高薬価の先行バイオ医薬品だが、自己負担額の上限を定めた高額療養費制度や公費助成制度によって守られている。このため、バイオシミラーに切り換えても、先行バイオでもバイオシミラーでも自己負担比率が変わらないため、患者自身が自己負担を減らそうとする動機づけが働かない。
武藤氏は「高額療養費制度、公費助成制度とのバランスを考えないといけない」と述べ、制度の見直しの必要性に言及。品目ごとの使用率目標を設定し、目標達成割合に応じて医療機関に診療報酬を与えるなど、医療機関や保険者にインセンティブを付与する仕組みを導入し、バイオシミラーの市場拡大につなげる案を提唱する。
一方、製薬企業の動向についても、バイオシミラーへの参入を表明する企業が増加する一方、いまだ様子見の企業も少なくない。低分子のGE薬に比べ、承認時に臨床試験が必須になるほか、高い生産コストや厳格な品質管理体制なども重荷になっている。事業性についても、仮に上市に成功したとしても、それまで費やしてきた開発コストを売上分で回収できるかも不透明だ。
そんな中、武藤氏は、日本化薬と三菱ガス化学が合弁会社を設立し、国内でバイオシミラー製造に着手するという動きを歓迎する。これまで国内で上市されたバイオシミラーは、海外で生産した製剤を輸入して供給されているものばかりだった。
「バイオ医薬品の製法もずいぶんと変わってきて、シングルユース設備や収量効率の良い細胞を見つけて製造するという手法に変化してきている。日本は、韓国などに比べると後発組だが、後発であるメリットを生かして技術革新を取り込んでほしい」と期待感を示す。
さらに、バイオシミラーの安定供給を考えたときに、「“日の丸バイオシミラー”が登場すれば、加算をつけて優遇するのも良いのではないか」と述べ、国産バイオシミラーの薬価については、高く評価すべきとの考えを述べた。
新薬に近い事業基盤が求められるバイオシミラーに関しては、専業メーカーで構成された日本ジェネリック製薬協会との連携だけではなく、「先発系メーカーとの付き合いも非常に重要」と述べ、先発系メーカーとの距離を縮める取り組みも進める考えだ。