致死率30%のSFTS、治療薬開発へ
長崎大学は6月28日、国立感染症研究所や愛媛大学などと共同で、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の治療薬開発のための臨床研究に着手することを発表した。
SFTSは、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症で、2011年に中国の研究者らによって発表された。マダニが媒介し、発熱や消化器症状、意識障害などを引き起こす。
国内で初めて感染が報告された2013年以降、今年5月末までに、西日本を中心に185人の感染が確認され、そのうち47人が死亡している。また、当時は診断がつかなかったが、中国で報告されるより以前の2005年に、長崎でも2例のSFTS患者がいたことがわかっている。致死率が25~30%と非常に高いうえ、これまでに有効な予防薬や治療薬が開発されていなかった。
全国30余りの医療機関で25例の臨床データ取得予定
今回の臨床研究は、長崎大学の河野茂理事・副学長が開発に携わったインフルエンザ治療薬で、富士化学が商品化した「アビガン」(一般名:ファビピラビル)の有効性を確認することが目的。アビガンは、エボラウイルス病の治療薬としても効果が期待されているが、マウスを使った実験で、SFTSに対する治療効果が確認されたことから、このほど、薬の実用化を目指した臨床研究を実施することが決まったとしている。
その内容は、SFTSと確定診断されたり、感染が強く疑われる患者を対象にファビピラビルを投与し、安全性や効果を確認するというもの。全国の30余りの医療機関が研究協力医療機関として加わり、年末までに25例の臨床データを取得する計画。長崎県では、長崎大学病院のほか4施設が参加を検討している。
同大学は研究協力医療機関に加わるほか、河野理事が分担研究開発者として臨床試験全体を支える。また、長崎大学病院での臨床研究の場合には、従来通り、長崎大学病院が熱帯医学研究所と連携して患者の診療を行うなど万全のサポートを実施するとしている。
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