複数回のBPA後も続く運動能力低下などの心不全症状が課題
国立循環器病研究センターは6月28日、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)におけるバルーン肺動脈形成術(BPA)終了後に開始する心臓リハビリテーションが、安全かつ運動能力の改善に非常に有効であることを明らかにしたと発表した。研究は、国循肺循環科の福井重文医師、大郷剛医長、後藤葉一循環器病リハビリテーション部長らの研究チームによるもの。研究成果は、英国の医療専門誌「Heart」オンライン版に5月24日付で掲載された。
画像はリリースより
CTEFHは厚生労働省指定の難病。治療法としては、外科的手術やBPAが一般的だが、外科手術は非常に高度であるため施術可能な施設は限られており、高齢や血栓の状況などから手術の適応とならないこともある。
一方、近年では、肺高血圧の改善のみならず右心室機能や運動能力の向上、自覚症状の改善などBPAの安全性や有効性が認められ、世界的にも普及しつつある。しかし、BPA後の安静時平均肺動脈圧は23mmHgで肺高血圧症の定義とされる25mmHgよりは改善するものの、複数回のBPA後も運動能力低下や息切れなど心不全症状が続くケースもあることが、BPAの新たな問題点として注目されている。
肺高血圧患者に対する積極的な心リハの適用拡大に期待
この新たな問題に対し、研究チームは、複数回のBPA終了後1週間以内に開始する12週間の心リハへの参加群17人と不参加群24人の運動能力を比較。その結果、心リハ終了時の運動能力の改善率は不参加群で+2.3%であったのに対し参加群は+11.2%と大きく改善し、心リハが終了する3か月後には運動能力の年齢予測値が78.2%と正常の80%以上に近いレベルまで改善した。このことから、BPAとその直後からの心リハの組み合わせはCTEPH患者の症状改善と運動能力回復に非常に有効であることがわかったとしている。
今回の研究成果により、従来運動を控えた方がよいとされていたCTEPHを含む肺高血圧患者に対する積極的な心リハの適用拡大とそれに伴う大幅な機能改善が期待される。しかし、動いた時の血中酸素濃度低下により在宅酸素療法が必要になるケースも多いのが現状であり、今後は積極的な上肢や呼吸筋のリハビリトレーニングの追加により呼吸筋力や血中酸素濃度の改善につながるかどうかが重要な検討課題となると考えられると、研究チームは述べている。
▼関連リンク
・国立循環器病研究センター プレスリリース