心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中のリスク13%低下
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は6月27日、都内で糖尿病プレスセミナーを開催。6月10~14日に米国ルイジアナ州で開かれた第76回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA)で発表された、ヒトGLP-1アナログ製剤「リラグルチド」(製品名:ビクトーザ)の心血管アウトカム試験(LEADER試験)の結果について、関西電力病院総長で関西電力医学研究所所長の清野裕氏が解説した。
関西電力病院総長 関西電力医学研究所所長の清野裕氏
LEADER試験は、1日1回投与のリラグルチド(0.6~1.8mg)の長期の影響を検討する多施設、国際共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験。2型糖尿病患者などを対象に世界35か国で実施された。プライマリーエンドポイントに心血管死、非致死性心筋梗塞または非致死性脳卒中のいずれかが発現するまでの時間が、重要なセカンダリーエンドポイントとして、拡大複合心血管アウトカム(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、冠動脈血行再建術、入院を必要とする不安定狭心症、心不全による入院)、総死亡、拡大複合心血管アウトカムの各項目が挙げられている。
試験の結果、リラグルチドはプラセボと比較して、心血管死、非致死性心筋梗塞または非致死性脳卒中のリスクを有意に13%低下させた。心血管イベントによる死亡リスクも有意に22%低下、総死亡リスクでは有意に15%低下、顕性アルブミン尿、血清クレアチニン倍加、末期腎不全、腎死のいずれかが発現するリスクは有意に22%低下させたとしている。
「エンパグリフロジンは血行動態に、リラグルチドは動脈硬化に」(清野氏)
清野氏は、2015年秋に発表されたSGLT2阻害薬「エンパグリフロジン」の心血管アウトカム試験(EMPA-REG OUTCOME試験)との比較も行った。リラグルチド、エンパグリフロジンいずれもプラセボと比較して有意に心血管イベントが抑制されるが、プラセボとの差が開く時期については、エンパグリフロジンは無作為化から約3か月後であるのに対し、リラグルチドは1年半後であることを指摘した。
さらに、イベントごとに評価を行ったところ、エンパグリフロジンでは心血管死、心不全による入院の抑制に高い効果があるのに対し、リラグルチドでは非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の抑制に高い効果が見られた。清野氏は、あくまで“私の仮説”と念を押したうえで、「エンパグリフロジンは血行動態に対して、リラグルチドは動脈硬化に対して抑制的に働いたのではないか」と語った。
今後、日本でもGLP-1の使用経験が増え、有用性、安全性のエビデンスが蓄積されることが期待される。
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