タンパク質凝集体伴う疾患、どのように凝集体形成するかわからず
千葉大学は6月24日、同大学大学院融合科学研究科の板倉英祐助教、MRC laboratory of molecular biologyのRamanujan Hegdeグループリーダーらの共同研究グループが、細胞質の膜タンパク質によるタンパク質凝集体形成を防ぐ細胞内の新しい掃除システム(膜タンパク質品質管理経路)を発見したと発表した。研究成果は、国際科学誌「Molecular Cell」オンライン版に6月23付けで公開された。
画像はリリースより
ヒトはゲノムの中に約2万種類の遺伝子をもち、それぞれの遺伝子がタンパク質として機能している。2万種類のタンパク質のうち25%を占めているものが膜タンパク質と呼ばれるタンパク質だ。高疎水性の領域(膜貫通ドメイン)をもつ膜タンパク質は、細胞質で合成された後、ミトコンドリアなどの膜へ輸送され働く。しかし膜タンパク質の輸送に失敗すると、高疎水性の領域が簡単に不適切な相互作用を引き起こしてしまい、タンパク質凝集体を引き起こしてしまう。
一方で、神経疾患などに代表されるタンパク質凝集体を伴う疾患は、どのようにして凝集体形成を生じるのかよくわかっていない。その仕組みを理解することは、疾患の根本的な予防や治療に役立つものと期待されている。
ユビキリンの機能低下、タンパク質凝集体形成引き起こす
ミトコンドリアがストレスを受けると膜タンパク質の輸送がうまくいかなくなることから、共同研究グループは、輸送に失敗した膜タンパク質がどのような運命を辿るのかを調査した。その結果、ミトコンドリアへ辿り着けなかった膜タンパク質は、ユビキリンと呼ばれるタンパク質と結合することで、保護されていることを発見したとしている。
さらに、ユビキリンは結合している膜タンパク質を分解へ導く機能も担っており、実際にユビキリンが働かなくなると、細胞内の膜タンパク質が凝集体を形成しやすくなった。これらから、ユビキリンは、細胞質の余分な膜タンパク質の掃除を行う新しいタイプのタンパク質品質管理システムとして働いていることが明らかとなった。
ユビキリン遺伝子は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝⼦として報告されていることから、研究結果はALSなどの神経疾患などの原因解明への貢献へとつながる、と共同研究グループは述べている。
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