心不全患者の半数以上が罹患
アボットは6月23日、重度の僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対するクリップを用いたカテーテル治療の国内臨床試験(治験機器識別記号:AVJ-514)において、予定していた症例登録を完了したことを発表した。国内6か所の治験実施医療機関において、30人の被験者が登録され、臨床試験結果は、医薬品医療機器総合機構への製造販売承認申請へ用いられるとしている。
MRは、僧帽弁の弁が完全に閉じないために心臓の血液が逆流する病状で、心不全を引き起こし、やがて死に至る疾患。米国では400万人以上が罹患している一般的な病気であり、75歳以上ではほぼ10人に1人。日本では、心不全患者のうち半数以上がMRを有していると推定されている。
現在は、開心術による僧帽弁の外科的手術が標準的治療だが、高齢、または高齢により筋力や活動レベルが低下した虚弱状態(フレイル)、併存疾患などの理由により外科的手術を受けることのできない場合もある。そのような患者では、内科的治療で症状のコントロールにとどめ、病気の進行を止めるに至らない状況にあり、国内でのMR治療に対する低侵襲治療のニーズが高まっている。
外科的手術困難な30人で有効性、安全性検証
アボットのクリップを用いたカテーテル治療法は、外科的な開心術を必要とせずに僧帽弁逆流の改善が可能。このカテーテル式の医療機器は、脚の血管である大腿静脈を介して心臓へ挿入される。カテーテル先端にあるクリップを留置した後は、心臓が血液をより効率的に送り出すことを可能とするため、症状が改善し、患者のQOL改善が期待されるとしている。
この医療機器は、2008年に欧州でのCEマークを取得後、2013年に米国でFDA承認を取得。これまでに世界40か国以上で3万人超が、このクリップを用いた新規カテーテル治療デバイスによるMRの治療を受けている。
今回の治験は、前向き、多施設共同、単群試験で、重度の変性性僧帽弁閉鎖不全症(DMR)、または機能性僧帽弁閉鎖不全症(FMR)を有し、ハートチームにより外科的手術困難と判断された患者30人を対象に、アボットのクリップを用いたカテーテルによる新規僧帽弁治療(AVJ-514)の有効性と安全性を検証するもの。
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・アボット ジャパン株式会社 プレスリリース