18か国、4,200人以上のデータを解析したMOSA1c試験
米国イーライリリー・アンド・カンパニーは6月11日、医療関係者と糖尿病患者のコミュニケーション、そして両者の関係性が患者の心理的負担や治療のアドヒアランスにどのような影響を与えているかを明らかにしたと発表した。このハーバード大学の関連医療機関であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院の主導で実施された多国間の観察的インスリンによる治療強化(Multinational Observational Insulin Progression:MOSA1c)に関する試験に基づく6つの演題は、米国ニューオーリンズで開催された第76回米国糖尿病学会年次学術集会において発表された。
MOSA1c試験では、北米、中南米、欧州、アジア、中東の18か国において、4,200人を超える2型糖尿病患者のデータを2年間にわたり非介入調査し、解析した。それによると、患者と医療関係者との関係改善は、糖尿病に関連する心理的負担の軽減、糖尿病知識スコアの向上、血糖自己測定頻度などの自己管理に対する前向きな態度、指示された治療に対する自己申告のアドヒアランスの向上などに関与していたとしている。
若い患者、教育水準高い患者でインスリン治療強化の確率高く
さらに、より若い患者、教育水準の高い患者およびアジアに居住している患者では、インスリンによる治療強化がなされる確率が高いこと、年齢が若く、ベースラインのHbA1c値が高く、NPHインスリンを使用していることは、試験終了時のHbA1c値の高値と有意に関連していたことも確認された。
インスリンを使用中の2型糖尿病患者の過半数が血糖値を管理しきれていないことが多くの研究でわかっているが、同病院の准医師兼ハーバード大学医学部准教授であり治験総括医を務めたSeoyoung C. Kim医学博士は、同試験のデータから、この2年間の観察試験で血糖値を管理しきれているのは患者全体の3分の1以下であったにもかかわらず、最適な血糖管理ができていない患者のうち糖尿病薬物治療を追加投与されたのは約4割に過ぎないことを問題視。「患者と医療関係者の関係性が患者の心理的負担の程度や、場合によってはHbA1c値に影響するため、患者へのコミュニケーションや患者の受け止め方が極めて重要」と述べている。
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・日本イーライリリー株式会社 プレスリリース