予防策実証する研究に参加しやすい環境整備求められる
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は6月22日、日本医療研究開発機構の認知症研究開発事業の支援により、国立長寿医療研究センターなどと共に認知症の発症予防を目指したインターネット健常者登録システム「IROOP(TM)」(Integrated Registry Of Orange Plan)を開発し、登録運用を開始したと発表した。
画像はリリースより
日本では、すべての団塊世代が75歳以上となる2025年に認知症人口が700万人以上、予備軍を含めると相当数に上ると推計されている。認知症人口は世界規模で急増しつつあり、認知症、特にアルツハイマー病に対する対策が国際的に急がれているが、アルツハイマー病を根本的に治療する薬の開発が進んでいるとはいえない。
その原因のひとつとして、認知症の発症を予防するための方策を見つける研究や、認知機能の改善が期待される薬の効果を確かめる治験が計画されている場合でも、その有効性を検証するに適した人に効果的に参加募集の案内をすることが難しいことが挙げられている。イギリスの事例では、環境要因や生活習慣病への取り組みがなされ、認知症の有病率は下がったという報告もある。このような取り組みの重要性や有効性を確かめるためにも、多くの人に予防策を実証する研究に参加しやすい環境整備が求められている。
40歳以上の健常者、数万人規模で登録
今回登録運用を開始したIROOPは、厚生労働省の認知症施策推進総合戦略である新オレンジプランに基づく研究として、認知症が発症する前の症状をとらえ、生活習慣の改善などにより発症を予防する因子の解明と、認知機能の改善が期待される薬の開発のための臨床研究や治験促進を目的とする、認知症予防のための健常者レジストリのシステム。
全国の40歳以上の健常者に対し、インターネット上での登録を数万人規模で募る。登録した人は、インターネット上で生活習慣などのアンケートに回答し、認知機能を簡易にチェックできる検査「IROOPあたまの健康チェック」を半年ごとに電話で受けることができる。検査結果は、登録者のマイページから確認が可能。また、登録者の中から適した人には、生活習慣の改善などにより認知症の発症を予防する臨床研究や、認知機能の改善が期待される薬の効果を確かめる治験の案内を行うとしている。
こうした健常者登録システムの運用は、日本初の取り組み。NCNPでは、アンケート情報や記憶機能の経過関連に関する因子などを元に、認知症の解明や発症予防に役立てたいとしており、数万人規模の登録を加速させるために、全国約400の国立病院や認知症疾患医療センターなどに登録啓発のための広報ポスターや冊子を設置し、インターネット上でも募集するなど、広く国民に向けた広報活動を実施していく予定。
▼関連リンク
・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース