2型糖尿病患者の半数、腎疾患併存
ドイツのベーリンガーインゲルハイムと、米国のイーライリリー・アンド・カンパニーは6月14日、心血管疾患を有する2型糖尿病患者を対象に「ジャディアンス(R)」(一般名:エンパグリフロジン)を標準治療に上乗せしたところ、腎疾患の新規発症または悪化のリスクを、プラセボと比較して39%低下させたという試験結果を発表した。この結果は、「The New England Journal of Medicine」に掲載され、米国ニューオーリンズで開催された米国糖尿病学会(ADA)第76回学術総会でも発表された。
糖尿病患者では、糖尿病に罹患していない人々と比較して腎疾患が非常に多く認められ、2型糖尿病患者の約半数で併存している。腎疾患は、その最終段階として腎不全に至る可能性があり、通常、透析または腎移植のいずれかを必要とする。また、腎機能が低下すると余命が平均を下回ることが多く、低血糖、心血管疾患など、その他の糖尿病関連合併症のリスクも上昇。心血管疾患は、2型糖尿患者において最も多い死因となっている。
ジャディアンスは、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬。欧州および米国をはじめ、世界各国で成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されている。同剤は、腎臓によるグルコース(血糖)の再吸収を阻害し、尿中にグルコースを排出することで2型糖尿病患者の血糖値を低下。SGLT2阻害はグルコースを直接的に標的とし、膵β細胞機能およびインスリン経路とは無関係に作用する。
標準治療に上乗せでも腎アウトカム改善の可能性
今回発表された試験結果は、EMPA-REG OUTCOME(R)試験の探索的評価項目に対して、事前に規定された計画に従って解析された結果の一部で、「腎疾患の新規発症または悪化」は事前に規定した複合評価エンドポイント。なお、同試験は、世界42か国、7,000人以上の心血管疾患の既往歴を有する2型糖尿病の患者を対象とした長期多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。
試験結果によると、複合評価エンドポイントにおいて、ジャディアンスはプラセボと比較し、腎置換療法の開始を55%減少、血中クレアチニンの倍化を44%減少、マクロアルブミン尿(アルブミンというタンパク質が非常に高濃度で尿中に存在する状態)への進行を38%減少と、それぞれの臨床イベントで統計学的に有意な変化をもたらした。
同剤は時間の経過に伴う腎機能の低下に関しても、プラセボと比較して有意に抑制。さらに、試験に参加した患者の大部分は、2型糖尿病に伴う腎疾患に対して推奨される標準治療薬(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬)をすでに服用していたが、このような標準治療に上乗せした場合でも、ジャディアンスの腎に対する効果が認められたと報告している。