ALK陽性またはROS1陽性NSCLCを対象として
米国のファイザー社は6月6日、開発中の次世代ALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である「lorlatinib」(一般名:PF-06463922として申請中)の第1/2相試験で新たに得られた有望なデータを、第52回米国臨床腫瘍学会(ASCO)の口頭演題で発表した。
発表されたデータは、前治療歴のないまたは1回以上のTKI治療後に疾患進行を認めた、脳転移の有無を問わない、ALK陽性またはROS1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした第1相用量漸増試験から得られたもの。ALK陽性転移性NSCLC群の3例に完全奏効が、16例に部分奏効が認められ、奏効率(ORR)は46%(95%信頼区間:31-63)だった。無増悪生存期間(PFS)の中央値は11.4か月(95%信頼区間:3.4-16.6)。なお、参加した患者の大部分は2剤以上のALK TKI投与歴を有していた。さらに、lorlatinibは、ALK陽性またはROS1陽性転移性NSCLCにおいて脳転移の腫瘍縮小効果を示した。
脳転移有する患者に有効の可能性
同社によると、第1相試験では、lorlatinibは1日に1回または2回連続投与された。主要評価項目は、最大耐量と第2相試験以降で用いる推奨用量の決定。約10の用量レベル(10~200mg)を検討し、第2相試験での推奨用量を100mg1日1回と決定した。その他の評価項目として、安全性や「RECIST v1.1」を用いた有効性の評価(脳転移への効果の検討を含む)が含まれている。2016年1月15日までに54人が同試験に参加して治療を受けており、その内訳はALK陽性41例、RO1陽性12例、不明1例。多くの患者はTKIによる前治療歴を有しており、前治療歴1回が20例、2回以上が27例だった。また、39例は治験参加時に脳転移を有していた。
第1相試験で最も多く認められた有害事象(AE)は、高コレステロール血症が69%および末梢性浮腫が37%だった。高コレステロール血症は、治験薬と関連ありと判断されたグレード3以上のAEで最も多く認められた(11%)ものであり、投与中断または減量理由として最多だった。AEにより試験を中止した症例はなかった。第2相試験推奨用量の投与を受けた17例のうち、グレードを問わないAEによって投与中断または一時休薬を要したのは4例だった。
ALK陽性またはROS1陽性の転移性NSCLC患者の多くは、一次治療で完治せず、疾患進行を認め、脳転移を起こしやすいと言われている。今回得られたデータは、繰り返し治療を受けた患者、また脳転移を有する患者といった幅広い患者層にlorlatinibが有効である可能性を示唆している、と同社は述べている。
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・ファイザー株式会社 プレスリリース