転移性ホルモン感受性前立腺がんに対して
ドイツのバイエル社とフィンランドのオリオン社は6月3日、前立腺がんの分野で開発中のアンドロゲン受容体(AR)拮抗薬「BAY-1841788」(ODM-201)の国際的な臨床開発プログラムを拡大すると発表した。
前立腺がんは世界の男性のがんで2番目に多く、男性のがんによる死因の第5位。2012年には世界中で110万人強が前立腺がんと診断された。診断時には、多くの男性は前立腺がんが局部にとどまっている。即ち、がんは前立腺に限定されており、根治目的の手術または放射線療法によって治療することができる。がんが再発し、転移あるいは拡散するようになれば、ホルモン感受性疾患治療となり、アンドロゲン遮断療法(ADT)が基本となる。
男性の約5%は初めて前立腺がんと診断されたときに、すでに遠隔転移している。新たに転移性ホルモン感受性前立腺がん(HSPC)と診断された男性は、まずADTあるいはドセタキセルとADTの併用などのホルモン療法で治療されることになる。この一時治療を受けても、転移性HSPC患者の大半は、最終的には去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)へと進み、生存や生活の質に影響が出てくるとされている。
2016年末頃に患者登録開始の見通し
BAY-1841788は、開発中の経口AR拮抗薬であり、ARと高い親和性で結合し、受容体を阻害することによりがん細胞の増殖を阻害する独自の化学構造をもっている。この化合物は現在、ハイリスク非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)の第3相臨床試験ARAMISの過程にある。バイエル社とオリオン社は、2014年に締結した契約を新規に転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対するBAY-1841788の共同開発を含むものへと拡大していた。
新しい第3相臨床試験ARASENS試験は、mHSPCと診断され、ファーストラインのホルモン療法を開始している男性において、標準的なADT及び化学療法であるドセタキセルとの併用下で、BAY-1841788を評価するもの。約1,300人の患者が1対1の比率で無作為に選ばれ、BAY-1841788投与群と治験医師の選択によるADT(LHRHアゴニスト/アンタゴニストまたは精巣摘除術)併用のプラセボ群に分かれ、無作為化の最大12週間前に開始される。無作為化の後、6サイクルのドセタキセルが投与される。
この研究の主要エンドポイントは、全体としての生存期間で、副次的なエンドポイントは、去勢抵抗性前立腺がんまでの期間(CRPCまでの時間)、次の抗腫瘍療法開始までの期間、症候性骨関連事象のない生存期間(SSE-FS)、症候性骨関連事象(SSE)の初回発現までの期間、オピオイド使用開始までの期間、疼痛憎悪までの期間、疾患の身体症状の悪化までの期間と安全性。2016年末頃に患者登録を開始する見込みとなっている。
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・バイエル薬品株式会社 ニュースリリース