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アルツハイマー病における抗精神病薬による死亡リスク 最大2.5倍に-老年精神医学会

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2016年06月13日 PM04:00

1万例の抗精神薬の死亡リスク検討「

日本老年精神医学会は6月23~24日に石川県金沢市で開催する「第31回日本老年精神医学会」に先立ち、6月8日に都内でプレスセミナーを開いた。同学会理事長で、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授の新井平伊氏が、「J-CATIA研究」の結果を紹介した。これは、65歳以上のアルツハイマー病における抗精神薬による死亡リスクを検討した、前方視的コホート研究としては世界初となるもの。


順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授
新井平伊氏

2005年、米食品医薬品局()と厚生労働省は、アルツハイマー型認知症に伴うBPSD(周辺症状)に対し、抗精神薬の投与を適応外とし、警告を出した。しかし、臨床現場においては、患者が激しく暴力を振るうこともあり、特に興奮性のBPSDに対しては、抗精神薬を使わざるを得ない現状がある。そこで、同学会は抗精神病薬投与例および非投与例の死亡リスクを検討するため、J-CATIA研究を行った。

研究は、2012~13年に国内357施設で実施。登録時点で抗精神薬を服用している患者(服用群)5000例、服用していない患者(非服用群)5000例合わせて約1万例で死亡リスクがどのように異なるかを調べた。

その結果、全体の死亡率では服用群が3.4%、非服用群が3.0%と差がみられなかった。しかし、服用群の6割強に登録時点ですでに半年以上の抗精神薬服用歴があったことから、登録時点で服用歴のなかった服用群(新規服用群)のみの検討も行った。すると、0~10週では死亡例がなかったが、11~24週間では死亡率が9.4%、年齢、体重など補正後のオッズ比が非服用群と比べて2.5倍と高かった。

「抗精神薬による死亡リスクについては、現在も十分な配慮が必要」(新井氏)

新井氏は、FDAおよび厚労省の警告からほぼ11年が経過し、医療・介護レベルは向上しているが、抗精神薬による死亡リスクについては、現在も十分な配慮が必要で、「非薬物的アプローチ、抗精神薬以外の薬物療法が優先されるべき」との見解を示した。特に、新規に投与する患者には注意が必要であり、やむを得ず投与するときには、短期間が望ましく、減量、中止は常に考慮すべきとしている。一方で、現在6か月以上服用中の症例では比較的安全であり、「リスクベネフィットの観点から判断すべし」と語った。

団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年、認知症患者は700万人を超えると推計されている。臨床現場での適切な対応が求められる中、薬物療法のあり方は今後も争点といえそうだ。

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