タシグナのTFR臨床試験プログラム結果、初めて発表
スイスのノバルティス社は6月9日、第52回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で、「タシグナ(R)」(一般名:ニロチニブ)について、無治療寛解維持(TFR)臨床試験プログラムの初めての結果を発表した。
今回発表されたのは、19か国132施設で実施された、慢性期にある215人のフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)患者を対象とした、非盲検の第2相試験であるENESTfreedom試験と、18か国63施設で163人のPh+CML患者を対象に実施した、非盲検の第2相試験であるENESTop試験。
ENESTfreedom試験では、一次治療でタシグナでの治療を3年以上行った後に、持続的な深い分子遺伝学的効果を達成した190人のCML患者のうち、半数(51.6%)以上(信頼区間[CI]95%:44.2%~58.9%)が治療を中止し、48週間にわたりTFRを達成した。95%CIの下限が50%またはそれ以上になるという当初の統計的仮定に基づき、TFR期の48週時点で分子遺伝学的大寛解(MMR:BCR-ABL1 International Scale [IS]≤0.1%)よりも深い治療効果にある患者の割合を主要評価項目としていたが、これは達成しなかった。
同試験における治療期間の中央値は3.6年で、TFR開始前のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)への暴露は短期間だった。MMRの消失によりタシグナでの治療を再開した86人の患者のうち、98.8%がMMRを回復し(n=85)、88.4%がMR4.5(BCR-ABL1 IS 0.0032%:n=76)を回復。さらに再投与から7.9週、15週までに再投与患者の50%がMMR、MR4.5をそれぞれ達成したとしている。
適切な治療中止基準の確立に期待
ENESTop試験では、一次治療である「グリベック」(一般名:イマチニブ)での治療後に、タシグナでの治療で持続的な深い分子遺伝学的効果を達成することができた126人の患者を評価。タシグナで3年以上治療を行った後に持続的な深い分子遺伝学的効果を達成したのは57.9%の患者(95%CI:48.8%-66.7%)で、治療中止から48週時点で分子遺伝学的効果を維持していた。
同試験は、TFR期にタシグナを中止して48週以内にMR4.0(BCR-ABL1 IS≤0.01%)の消失またはMMRの消失が確認されなかった患者の割合を主要評価項目としており、これを達成。MR4.0の消失またはMMRの消失が確認された51人の患者がタシグナを再開した。これらの患者のうち、98.0%(n=50)が少なくともMMRを回復し、94.1%(n=48)および92.2%(n=47)がそれぞれMR4.0およびMR4.5を回復。再投与から12週、13.1週までに再投与患者の50%がMMR、MR4.5をそれぞれ達成したとしている。
これらの試験により、事前に規定された厳格な試験基準を満たしたPh+ CML患者の50%以上が、一次治療でタシグナを使用していた場合も、グリベックから切り替えた後でも、いずれの場合でもタシグナ中止後にTFRを達成したことが判明。TFRへの理解を促し、Ph+ CML患者の適切な治療中止基準の確立に貢献するとしている。
なお、両試験とも継続中で、タシグナの中止後長期間にわたり患者が寛解を維持することができるかを評価する、フォローアップが計画されている。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース