小児期の眼底所見を後方的に検討
東京医科歯科大学は6月8日、主要な失明原因である病的近視を発症した患者では、小児期において、通常の学童近視と異なる特徴的な眼底所見を示すことをつきとめたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科眼科学分野の大野京子教授と横井多恵助教の研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Ophthalmology」のオンライン版に5月26日付けで発表されている。
画像はリリースより
病的近視では、眼球がいびつに変形することにより、網膜や視神経を障害され、失明を来す。日本の疫学研究(多治見スタディ)でも、病的近視は失明原因の20%を占め最多。近年世界的に、特に日本を含む東アジア諸国で、学童及び若年の近視の頻度が急激に増加し、社会問題となっている。しかし、学童や若年において、近視の程度が進むと、将来、失明原因となる病的近視にまで至るのか、それともメガネなどを装用すれば、一生良好な矯正視力を維持できるのかは不明だった。
同大学の眼科には、登録患者約4,000名を擁する世界最大の強度近視専門外来がある。そこで同研究グループは、実際に成人以降に病的近視による失明を来した患者において、小児期の眼底所見を後方視的に検討。将来の病的近視発症を予測する、小児期の特徴的な眼底所見を調べたという。
リスクがある小児に対する早期の予防的介入が可能に
研究グループは、強度近視外来通院中の病的近視による視覚障害患者のうち、1)初診時年齢15歳以下、2)経過観察期間20年以上、を満たす35眼を調査。成人以降に病的近視を発症した患者の83%では、小児期にすでに視神経周囲にびまん性萎縮病変がみられ、眼底所見が通常の学童近視と異なることを突き止めたという。
この成果は、将来病的近視による失明に至る患者では、すでに小児期において一般の学童近視と異なる眼底所見の特徴を示し、「視神経周囲のびまん性萎縮」が将来の病的近視発症を予測する重要なサインであることを解明したものだ。
同研究により、将来病的近視による失明を起こしうるハイリスク小児と、眼鏡矯正などで良好な視力を維持できる通常の学童近視とを、早期に鑑別することが可能となる。通常の学童近視に対しては、失明に対する過度な不安を取り除く指導ができるとともに、将来病的近視発症のハイリスクがある小児については、これらの小児を早期に的確に診断し、病的近視への進行を抑制する予防的介入を選択的に行うことが可能になる、と研究グループは述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース