誕生日における死亡者数の増加は海外でも
大阪大学は6月1日、自殺や事故を原因として死亡した全ての人々を対象とした統計分析を行った結果、誕生日には他の日より自殺や事故によって死亡する人数が多いことが判明したと発表した。この研究は、同大大学院国際公共政策研究科の松林哲也准教授と、アメリカ・シラキュース大学の上田路子リサーチアシスタントプロフェッサーによるもの。研究成果は「Social Science & Medicine」に4月29日付けで掲載されている。
画像はリリースより
研究グループは、死亡者の誕生日と死亡日の関係に注目。誕生日前後の死亡リスクに関しては、これまでに2つの仮説が提唱されてきた。1つ目の仮説である「延期」では、誕生日など自分にとって意味のある記念日を迎えるまでは生き続けようとする人が多い場合、誕生日に死亡する人の数は少なくなると予想される。対照的に、2つ目の仮説「誕生日ブルー」(birthday blues) では、記念日を期待していたような形で祝うことができなかった場合などは、孤独感などの心的ストレスが増えるため、誕生日に死亡する人の数は多くなると考えられている。
欧米における近年の研究は後者の仮説を支持する結果となっているが、文化の異なる日本でも同様の傾向があるかについては明らかになっていなかった。
交通事故死、溺死や転落死も誕生日に20~40%上昇
研究グループは、1974年から2014年にかけての人口動態調査の死亡票を用いて統計分析を実施。分析対象としたのは、自殺、交通事故死、溺死、窒息死、転落死。調査データには、当該期間中にこれらの死因によって死亡した全ての人々が含まれ、分析対象の死亡者数は約207万人だった。
分析の結果、誕生日に死亡した死亡者数は約8000人、一方で誕生日以外の死亡者数の平均が約5700人であったという。このことから誕生日に自殺や事故で死亡する人数は、他の日に死亡する人数と比べて大幅に多いことがわかった。
さらに、死因別に、誕生日からの日数と死亡者数の関係を、ポアソン回帰分析という統計手法を用いて分析したところ、誕生日の影響が最も強く見られるのは自殺で、自分の誕生日に自殺で亡くなる人々の数はそれ以外の日に比べて50%ほど多いことが判明(95%信頼区間:46-55%)。さらに、乗用車やバイクによる交通事故死、また溺死や転落死などの数も、誕生日には20~40%ほど上昇するという。
この研究の成果によって、自殺念慮を持つ人や自殺リスクの高い人が誕生日を迎える際には、医療関係者や家族・友人が格段の注意を払ったり、普段以上のサポートを提供したりすることの必要性が示唆された。研究グループは「今後の自殺予防対策を考えていく上で社会的意義が大きいと考えられる」と述べている。
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