米ノースカロライナ大学附属病院(UNCH)のスティーブン・エッケル副薬剤部長は2日、都内で講演し、同院で人体に影響を及ぼす抗癌剤等の廃棄額が年間約8000万円に上ることを紹介。閉鎖式接続器具(CSTD)を用いることにより、残った抗癌剤を複数回利用するドラッグ・バイアル・オプティマイゼーション(DVO)を導入した結果、導入時に比べて薬剤費を71%削減できた実績を示した。エッケル氏は、DVO導入には薬剤の安定性と無菌性の確保が重要と強調した。同院では、導入から4年が経過した現在も無事故で推移しているという。
■米UNCH エッケル副薬剤部長
同院では、2009年にノースカロライナ癌病院を開設した。抗癌剤の調製量は週に175回、そのうち外来クリニックでの調製が全体の65%を占める。平日は薬剤師7人、テクニシャン9人で対応している。同院では、薬剤師や看護師など医療従事者の安全目的で、全ての抗癌剤でCSTDを使用してきたが、薬剤部でバイアルを使い切らずに廃棄していたことから、薬剤費削減に向けた圧力が強まり、バイアルの残薬を有効利用できるDVOが導入されることになった。
エッケル氏は、米国で投与されずバイアルに残った薬剤の割合が1~33%、これら残薬コストの無駄によって医療費が最大で約2200億円増えたとのデータを紹介。また、人体に影響を及ぼす抗癌剤など19種類の薬剤で廃棄額を算出した結果、1年間で約8000万円近くに上ったことを示し、同院におけるDVO導入前後の薬剤費は、導入前の11年から14年にかけて71%削減できたことを示した。
その上で、CSTDを用いたDVOの実施に当たっては「安定性と無菌性が重要」と強調し、スタッフのトレーニングや文献をレビューした解説書の作成、微生物検査の実施など、基本的な体制整備が必要と指摘した。
同院では、残薬の調製に関するビデオ学習や筆記試験の実施、さらにCSTDを用いた調製作業の実地訓練が行われているという。
一方、無菌試験でも汚染されたバイアルがなかったこと、死に至る危険性が高い院内感染の一つである中心静脈カテーテル関連血流感染も導入後で増えなかったことから、「安全性が示せた」とした。
エッケル氏は、全米でDVOを導入している医療機関は全体の1~2割程度との認識を示し、DVO導入がバイアル残薬の有効活用と曝露リスク低下につながるとした。