肺動脈血管内皮のAMP活性化プロテインキナーゼを活性化
東北大学は5月31日、血管内皮細胞の酵素の1つである「AMP活性化プロテインキナーゼ」(AMPK)が、肺高血圧症の発症を抑制していることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授ら研究グループによるもの。研究成果は、米国心臓協会(AHA)学会誌「Circulation Research」(電子版)に5月23日付けで掲載されている。
画像はリリースより
致死的疾患である肺高血圧症は、指定難病に認定されている。発症後の平均生存期間が成人例で未治療の場合約3年と重篤であり、薬剤による根治は困難である。肺高血圧症患者の血中には、各種の炎症性サイトカインが高濃度に存在し、長期的な生命予後と相関することが知られていたが、肺動脈への直接的な作用や肺高血圧症悪化との因果関係は分かっていなかった。
AMPK欠損マウス、肺高血圧症が著しく悪化
研究グループは、患者由来の血清が肺動脈血管内皮のAMPKを直接抑制することで、内皮機能低下させることを発見。肺動脈血管平滑筋細胞の増殖を促進し、結果として肺動脈の肥厚と肺高血圧症発症を促進することが判明したという。また、血管内皮選択的にAMPKを欠損させたマウスでは、血管内皮機能低下・血管平滑筋細胞増殖・炎症細胞浸潤が認められ、肺高血圧症が著しく悪化したとしている。
一方、糖尿病治療薬の1つであるメトホルミンが肺動脈血管内皮のAMPKを活性化し、マウスにおいて顕著な肺高血圧治療効果を有するという知見を世界で初めて解明。メトホルミンは、糖尿病治療薬として一般的に投与されている薬剤であることから、同薬剤に代表されるAMPK活性化を標的とする肺高血圧治療の新たな薬物治療の開発が期待されるとしている。
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