■医師への問合せ7項目省略
青森県八戸市の青森労災病院は、院内の医師と事前に協議して作成したプロトコルに基づき、保険調剤薬局からの疑義照会について病院薬剤部が医師に代わって直接回答する運用を昨年5月から開始した。7項目の疑義内容について、同院の医局会で薬剤部が直接回答を可能とする項目を了承。病院全体の合意のもと、診療科医師への問い合わせを省略して薬剤部が回答している。疑義照会の約3割に薬剤部が直接回答するようになったが、現在のところ医師、看護師の負担軽減、保険調剤薬局での患者の待ち時間短縮、業務効率向上につながったと評価されているという。
同院は、急性期の地域中核病院で、薬剤師数は10人。昨年度の外来患者数は1日平均約697人で、院外処方箋発行枚数は1カ月平均で6226枚、院外処方箋発行率は86.3%に達する。2008年8月にオーダリングシステムが稼働したことを受け、薬局からの疑義照会を薬剤部で受け取り、照会内容を要約して診療科に問い合わせ、医師から受け取った回答を薬局に伝える対応を行ってきたが、疑義照会の中には一包化調剤の指示や外用薬の規格変更など、薬剤部で判断できる内容も多かった。
そこで、疑義照会に回答する医師の負担を軽減するため、薬剤部では事前に同院の医局会と協議し、[1]一包化調剤への変更(患者希望やアドヒアランス等の理由による)[2]残薬調整に伴う処方日数の変更[3]別規格への変更(例:10mg2錠から20mg1錠)[4]同一成分の銘柄変更[5]外用薬の規格変更(合計処方量が変わらない場合)[6]半錠・粉砕・混合(患者アドヒアランス等の理由による)[7]週1回または月1回服用するビスホスホネート製剤等の処方日数変更――の7項目について、薬剤部が代行して直接回答を可能とするプロトコルを策定。病院全体の合意を得て、昨年5月から運用を開始した。
具体的には、全ての疑義照会について規定の書式に入力し、オーダリング端末上に保存するというもので、薬剤部が直接回答した場合は、PBPMの実施欄にチェックを入れ、保存すると共に、その内容について診療科へフィードバックしている。
昨年5月から12月までに同院が発行した院外処方箋で薬剤部が対応した疑義照会事例について検討したところ、薬局からの疑義照会件数は788件、そのうち薬剤部が診療科の医師に代わって直接回答した件数は211件(26.8%)だった。
直接回答した疑義照会の内容について見ると、一包化調剤への変更が67件(32%)と最も多く、次いで残薬調整に伴う日数変更が50件(24%)、別規格への変更が29件(14%)だった。また、医師へ疑義照会が行われたのは577件(73.2%)あり、そのうち用法・用量に関する疑義が137件(24%)と最も多かったが、薬剤部で回答可能にもかかわらず、残薬の調整に伴う日数調整や薬剤の追加・削除に関する疑義を医師に問い合わせていた事例も48件(9%)見られた。
これについて、同院薬剤部は「プロトコルは疑義照会を不要とするものではないことから、糖尿病や高血圧など慢性疾患治療薬の残薬が著しく多い場合は、治療効果への影響を考慮し、医師へ疑義照会した上で回答しているため」としている。残薬の発生理由によっては薬物療法に影響することが考えられるため、調整する対象薬剤や希望日数によっては、薬剤部がプロトコル適用の範囲かどうか判断し、対応を行っている。
現在まで特にトラブルは起こっていない。疑義照会の約3割に薬剤部が直接回答することにより、医師、看護師の業務負担の軽減につながったと高く評価されている。保険調剤薬局でも、プロトコルで定めた7項目については即答が可能となったことで患者の待ち時間短縮につながり、保険調剤薬局の業務効率向上にも寄与していると評価を受けているという。