感染応答、腫瘍免疫、自己免疫で重要な働き
北海道大学は5月31日、自然免疫を司る細胞のひとつであるナチュラルキラーT(NKT)細胞のインターフェロンγ産生機構の解明に成功したと発表した。
画像はリリースより
これは、同大学遺伝子病制御研究所免疫生物分野の清野研一郎教授、医学研究科免疫代謝内科の渥美達也教授らの共同研究によるもの。研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America(PNAS)」に、米国東部時間の5月25日付けで掲載された。
NKT細胞は、外部から異物が侵入するとインターフェロンγと呼ばれるサイトカインを産生・放出し、その他の免疫担当細胞を活性化することで、初期免疫応答において重要な役割を果たしている。中でも、NKT細胞の産出するインターフェロンγというサイトカインは、感染応答、腫瘍免疫、自己免疫において重要な働きを担うとされているが、NKT細胞がどのような機構でインターフェロンγを産生しているのかについては明らかとなっていなかった。
腫瘍免疫療法への応用、自己免疫疾患の病態解明に期待
共同研究グループは、データベースを用いて、NKT細胞におけるインターフェロンγ産生に関与する分子を抽出し、Basic-helix-loop-helix family e40(Bhlhe40)という分子が関与する可能性を見出した。さらにその分子のNKT細胞におけるインターフェロンγ産生への関与を、Bhlhe40を欠損させたマウスを用いて解析した。
その結果、Bhlhe40は、「T-bet」と呼ばれる転写因子と結合し、クロマチン構造と呼ばれる染色体の立体構造を変化させることで、インターフェロンγの産生を助けることがわかった。
インターフェロンγは、感染症だけではなく、腫瘍免疫や自己免疫においても重要な働きを担っていることがわかっており、今後の腫瘍免疫療法への応用や自己免疫疾患の病態解明に役立つ可能性があると、共同研究グループは述べている。
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