■日本企業は製造技術に強み
特許庁は、2015年度の特許出願技術動向調査報告書をまとめた。アンチセンスやRNA医薬などの核酸医薬に関する特許出願件数は、米国人による出願が約50%のシェアを占め、日本人の出願は約10%と、米国に次ぐ出願件数であることが分かった。出願件数ランキングでは、バイオベンチャーのオンコセラピーサイエンスが7位と、日本から唯一トップ10入りした。次いで化学メーカーの日東電工が14位、国内製薬企業は第一三共が30位に入った。
1980年から2013年までの核酸医薬の特許出願件数は、2万8655件だった。出願人の国籍を見ると、米国が1万5339件と最も多く、約50%のシェアを占めた。日本は3094件と約10%のシェアとなり、米国人に次ぐ出願を行っていることが明らかになった。次いでドイツが2040件、中国が1330件、フランスが1033件と続いた。
日本の出願人は、日本への出願件数が全体の42.9%と最も多かったが、日本へ特許が出願された4810件について出願人の国籍を見ると、米国籍が45.2%と最も多く、日本国籍の出願人は27.6%にとどまった。米国人は、欧州への特許出願件数も47.5%と最多で、積極的に外国出願をしていることが分かった。
核酸医薬の特許出願ランキングを見ると、トップは米アイシス・ファーマシューティカルズ(現アイオニス)が2363件と、2位の米アルナイラム・ファーマシューティカルズの1329件に2倍近い差をつけた。3位はスイスのノバルティスで542件、4位は仏サノフィで507件、5位は米イデラ・ファーマシューティカルズで468件と、トップ5のうち米国企業が3社、特にアイシスとアルナイラムの2社で圧倒的なシェアを占めた。
6位にスイスのロシュで375件、7位に日本のバイオベンチャーのオンコセラピー・サイエンスが343件と、日本の企業で唯一トップ10入りした。なお、ロシュとノバルティスについては、11年と15年に米バイオ企業のアローヘッドリサーチにRNAiの関連知的財産を売却している。
日本からは、日東電工が242件で14位、第一三共が139件と30位に入った。国内製薬企業は、唯一ランキング入りした第一三共の30位が最高位で、出願件数の上位にベンチャー企業を含め3社しかランクインしなかった。
アカデミアからは東京大学が121件で34位、科学技術振興機構が119件で35位、産業技術総合研究所が103件で43位と健闘が見られた。
ただ、技術区分別の出願件数ランキングを見ると、製造技術については、日本から日東電工が117件で2位、三井化学が42件で7位、日本新薬が37件で10位と、トップ10に日本の企業3社が入り、特に化学メーカーで強さが目立った。
論文発表件数については、05~14年に世界で発表された核酸医薬に関する論文のうち、4054件を解析した結果によると、トップは米国の1524件と、2位の中国452件、3位の日本430件、4位のドイツ237件、5位の韓国173件を大きく引き離した。
核酸医薬は、1998年に米国で世界初のアンチセンス医薬が承認されて以来、日欧米のいずれかで承認されたのは3品目に過ぎず、市場が確立しているとは言い難いのが現状だが、開発中の核酸医薬は世界でベンチャー企業など43社、141件の臨床試験が行われている。そのうち米国企業が24社、99件と全体の企業数の約6割、臨床試験数では約7割を占めたのに対し、日本企業の臨床試験数は7件にとどまるなど、後れを取っている。