■多田氏「“総合戦略”実現目指す」、畑中氏「イノベーション推進が課題」
多田氏は、就任のあいさつで、「つい2時間ほど前に製薬協会長の任を解かれほっとしていたところだったが、このたび大役を任され、私にとっては難度の高い仕事だと感じている」との心境を述べ、革新的な新薬創出と、ジェネリック医薬品やワクチン、OTC医薬品など良質な医薬品供給の環境整備に取り組む決意を示した。
昨年、厚生労働省が策定した医薬品産業強化総合戦略に触れ、▽良質な医薬品の安定供給▽医療費の効率化▽産業競争力強化――の三つを柱に、「“三位一体”の実現が医薬品産業に求められている」と指摘。その実現に向けては、「各加盟団体がカバーしている領域におけるイノベーションの創出が必要」との考えを示し、各団体が独自性や独立性を生かし、与えられた目標を達成していくべきとした。
薬価や税制、安全性、品質、グローバル化など医薬品産業全体の共通課題に対し、「各団体の課題に耳を傾け、医薬品産業強化総合戦略で示された三つの課題をバランス良く実現していきたい」と強調。
4月に施行された薬価改定については、「厳しい面が強く、社会保障関係費の伸長を薬剤引き下げだけによって財源を捻出するのは限界であり、これを続けていくと医薬品産業が疲弊し、良質の医薬品供給や産業競争力を確保できない」と述べ、「医薬品のイノベーションを推進するという視点が加味されたバランスの取れた産業政策を期待したい」と語った。
一方、畑中氏は総会後の記者会見で、今年1月に製薬産業が10年後に目指す姿として策定された「産業ビジョン2025」を製薬協の活動に反映していく方針を強調。「医療費抑制が課題になる中、新薬創出に対するコストが課題」と述べる一方、日本で先駆け審査指定制度、米国でブレークスルーセラピー、欧州でPRIMEといった革新的新薬をいち早く患者に届ける制度ができたことは、「追い風になる」と語った。その上で、イノベーションが適切に評価される仕組みの実現に向け、「日本は数少ない新薬創出国であり、研究開発では予見性可能な環境を求めていく」と製薬協として環境整備に取り組む考えを示した。
イノベーションの促進策では、日本医療研究開発機構(AMED)との連携を通じて、アカデミア発創薬の実現を推進していく。製薬協とAMEDのそれぞれにリエゾンオフィスを立ち上げ、今月24日に製薬協とAMEDのリエゾン会議を初めて実施し、意見交換した。今後、両者が参画するタスクフォースで官民協業の新薬開発が進められる。
また、次期薬価制度改革に向けては、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の制度化要望に加え、「事業の予見性を失い、われわれのイノベーションへの取り組みを否定するもの」(畑中氏)として、特例再算定制度の撤廃を求めた。
今年度から導入された費用対効果評価では、対象薬剤の適切な評価を要請し、消費税率の引き上げに伴う薬価の実勢価改定にも「断固反対」との立場を強調した。
副会長人事は次の通り。
【日薬連】畑中好彦氏、内藤晴夫氏(エーザイCEO)、土屋裕弘氏(田辺三菱製薬会長)
【製薬協】中山讓治氏(第一三共社長)、内藤晴夫氏(エーザイCEO)、手代木功氏(塩野義製薬社長)、多田正世氏、クリストフ・ウェバー氏(武田薬品社長)、土屋裕弘氏