2型糖尿病を合併した日本人の高LDLコレステロール血症患者が対象
アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社とアステラス製薬株式会社は5月23日、日本人の2型糖尿病を合併した高LDLコレステロール血症患者を対象とした「レパーサ(R)皮下注」(一般名:エボロクマブ(遺伝子組換え))の1年間投与のデータ解析の結果を発表した。
ヒトIgG2モノクローナル抗体であるレパーサは、血中のヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)が低比重リポタンパク受容体(LDLR)と結合するのを阻害する。その結果、LDLRの分解が抑制され、肝細胞表面でのLDLRの再利用を可能となる。血中LDLを除去するLDLR数を増加させ、LDL-C値を低下させるという。
同剤は、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)で効果不十分な、家族性高コレステロール血症(FH)又は高コレステロール血症を効能・効果とした皮下注射剤として、2016年1月に厚生労働省より承認を取得している。
ベースラインの血糖状態にかかわらず、持続的な有効性と安全性を確認
今回、第59回日本糖尿病学会年次学術集会(JDS 2016)で発表された解析は、YUKAWA-1及びYUKAWA-2試験の継続試験として、レパーサの長期投与の安全性、有効性を検討した国際共同第2相・第3相試験であるOSLER-1及びOSLER-2試験に参加した、日本人高LDLコレステロール血症患者556人を対象としたサブポピュレーション解析。この解析では、安定したスタチン療法を受けている、心血管イベントリスクの高い日本人高LDLコレステロール血症患者において、レパーサは、ベースラインの血糖状態にかかわらず持続的な有効性を示し、血糖管理に対する懸念すべき影響は見られないことが示されたという。
OSLER試験の対象者は、オープンラベルによる1年間のレパーサ投与+標準治療群または標準治療のみの群に無作為化。ベースラインの血糖状態に基づき、2型糖尿病、メタボリック症候群、またはいずれでもない群に分類して解析を行った。その結果、OSLER-1試験では、レパーサ投与群の1年目のLDL-C平均変化率(および標準誤差)は、2型糖尿病で–67%(2%)、メタボリック症候群で–72%(3%)、いずれでもない場合は–67%(2%)であり、標準治療群の変化率はそれぞれ–3%(4%)、3%(4%)及び–0.8%(2%)。OSLER-2試験では、レパーサ投与群のLDL-Cの平均変化率は、2型糖尿病で–65%(3%)、メタボリック症候群で-66%(7%)、いずれでもない場合は-66%(3%)であり、標準治療群の変化率はそれぞれ26%(6%)、12%(4%)、14%(4%)だった。
レパーサ投与群の1年目のベースラインからの血糖値(mg/dL)の平均変化量(および標準誤差)は、2型糖尿病で0.4(3.8)、メタボリック症候群で0.5(1.6)、いずれでもない場合は5.2(1.6)。標準治療群の変化量はそれぞれ、-6.7(7.2)、-0.4(7.7)、3.1(1.6)だった。レパーサ投与群において、1年目のベースラインからのHbA1cの平均変化量は、2型糖尿病で0.07%(0.10%)、メタボリック症候群で–0.08%(0.04%)、いずれでもない場合は0.08%(0.07%)。標準治療群の変化量は、0.02%(0.12%)、0.10%(0.15%)、および–0.06%(0.02%)だった。全体の有害事象の発生率は、レパーサ投与+標準治療群で75%、標準治療群で72%。また、同解析では、中和抗体は検出されなかったとしている。