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ドーパミン細胞の性質の違いをロボット顕微鏡で明らかに-阪大と東北大

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2016年05月25日 AM06:00

神経細胞をプロジェクションマッピングで刺激「」を開発

東北大学は5月18日、動く観察対象を高速に自動追跡して特定の神経細胞をプロジェクションマッピングによって刺激するロボット顕微鏡「オーサカベン」を開発し、行動中の線虫であるC.エレガンスの複数のドーパミン細胞の性質がそれぞれ異なることを明らかにしたと発表した。同研究は、大阪大学大学院理学研究科の木村幸太郎准教授と東北大学大学院情報科学研究科の橋本浩一教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」に5月19日付けで掲載されている。


画像はリリースより

哺乳類の脳には100~1000億もの神経細胞が存在し、これらの神経細胞はその形態や機能により、さまざまな種類に分類される。この形態や機能の多様性の多くは、さまざまな遺伝子や神経細胞同士の相互作用などによって決められていると考えられているが、詳しくは明らかになっていない。

一方、線虫C.エレガンスは、わずか302個の神経細胞しか持たないが、神経細胞ではたらく遺伝子の多くはヒトと類似しており、また刺激に対する応答行動や記憶・学習を行うことから、脳の基本的な仕組みを明らかにするためのモデル実験動物として世界中で研究が行われている。

プロジェクションマッピングで神経活動を“狙い撃ち”に

今回、研究グループは、水平面上を自由に移動する生物を1/200秒単位で自動追跡しながら、複数の神経活動を蛍光によって測定し、また複数の神経活動をプロジェクションマッピングによって一つひとつ“狙い撃ち”で刺激するロボット顕微鏡「オーサカベン (Optogenetic Stimulation Associated with Calcium imaging for Behaving Nematode: OSACaBeN)」を世界で初めて開発。C.エレガンスのドーパミン細胞に注目し、同顕微鏡で観察した。

ドーパミン細胞は、C. エレガンスの餌である大腸菌の層の中に移動した時に受ける物理的な圧力によって活動し、餌の存在に適した神経活動を引き起こすと考えられている。そのようなわずかな「圧力」を本当に感じることができるのか、C.エレガンスに4か所存在するドーパミン細胞が全て同じ役割を果たしているのかを調べたところ、頭部背側の1か所(CEPD)のドーパミン細胞だけが餌に対して強く持続的に応答することを見出した。さらに、この細胞だけをプロジェクションマッピングによって人工的に刺激すると、餌の層に移動した時と同じ行動変化を引き起こすことができたという。

C.エレガンスのドーパミン細胞は、高等動物と類似した遺伝子プログラムによってドーパミンを合成するための性質を獲得することが知られている。特に、頭部背側と頭部腹側のドーパミン細胞は構造的にも非常によく似ていることから、今回発見した応答性および行動変化への影響の違いは、全く予想されていなかったという。

今回の研究成果により、シンプルで解析が容易な C.エレガンスを用いることで、ドーパミン細胞や、均一と見なされている他の神経細胞集団がいくつかの機能的グループに分かれる仕組みを明らかにすること、また、オーサカベンを用いて、さまざまな角度から「脳活動と行動の関係」を明らかにすることが期待できると、研究グループは述べている。

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