天然の軟骨組織に匹敵する力学物性を有する高強度・高靱性ハイドロゲル
北海道大学は5月18日、骨組織と自発的に強く接着する新規ダブルネットワークゲルを開発したと発表した。この研究は、同大学先端生命科学研究院の龔剣萍教授と野々山貴行特任助教ら、医学研究科スポーツ医学分野の安田和則特任教授、北村信人准教授らの共同グループによるもの。研究成果は、独科学論文雑誌「Advanced Materials」に5月17日付けでオンライン公開された。
画像はリリースより
研究グループはこれまでに、天然の軟骨組織に匹敵する力学物性を有する高強度・高靱性ハイドロゲル、ダブルネットワークハイドロゲル(DNゲル)を開発している。さらにこのDNゲルが生体関節軟骨に対する低摩耗性を示すこと、このDNゲルを欠損した関節に埋植することで軟骨組織再生を誘導することも発見している。
このようにDNゲルは次世代軟骨治療用材料として優れた機能を有しているものの、その高い含水率のために生体内で固定・維持することが困難であり、実用化について大きな課題となっていた。
ゲル内部まで骨組織形成が進展、ゲルと骨組織が完全に融合
今回、研究グループはDNゲルの片側の表面層に、骨組織の無機主成分であるハイドロキシアパタイト(HAp)を複合化。その結果、骨組織と自発的に接着する「骨伝導能」を併せ持つことに成功した。
このHAp/DNゲルをウサギの膝関節大腿骨顆部に埋植したところ、4週間でゲル母材の強度よりも高い接着強度を達成した。さらに、詳細な観察から、ゲルの内部まで骨組織形成が進展し、ゲルと骨組織が完全に融合した構造を形成していることが判明。ゲルの接着という観点から見れば、世界最高強度を達成しているとしている。
この接着技術は極めて簡便であり、DNゲルのみならず他のゲルにも応用が可能。優れた力学物性・軟骨再生能に加えて、生物の骨治癒を利用した安全で無毒な接着法であり、DNゲルによる関節治療への実用化に向けて大きな前進になる、と研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース