脳内情報処理の重要な機能を担う「カップリング現象」
日本医療研究開発機構(AMED)は5月13日、てんかんの発作時に、脳波に特定のカップリング現象が著明に現れることを世界で初めて検出したと発表した。これは、大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(脳神経外科学)の貴島晴彦講師ら研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」オンライン版に5月5日付けで掲載されている。
画像はリリースより
てんかん外科手術では、脳の表面や脳の深部へ電極を設置して記録する高精度の脳波を調べることで、てんかんの正確な診断ができる。例えば、発作時の律動波(周波数の低い大きな波)や、最近では高精度の脳波でしか捉えられないγ波(25〜150Hz)以上の高周波や超低周波(0.5Hz以下)などがてんかん発作の診断に有用である。
以前から貴島講師らの研究グループでは、異なった周波数の脳波が相互に関連性をもって活動する「カップリング」と呼ばれる現象が脳内情報処理の重要な機能を担っていることにいち早く注目し、研究を進めていた。
発作予知や病態解明、新しい治療法への発展に期待も
今回の研究では、治療目的で記録された難治性側頭葉てんかんの患者の脳波をもとに、発作時と安静時の脳波にどの程度のカップリングが見られるかを計算して比較。その結果、発作時は安静時に比べて著明に強くなったカップリングが確認され、特に、β波(13~125Hz)の位相と、highγ波(80~150Hz)の振幅での組み合わせでこの傾向が著明に見られた。この発作時の特異的な増強を踏まえて、長時間の脳波から発作を検出する手法を試みると、非常に高い感度・特異度で発作を検出することができたという。
今回の研究成果は、入院中、長時間の脳波の検査中に正確に発作時を検出し、それをスタッフへ知らせるなどの応用ができる。さらには、埋め込み型のデバイスなどにより、日常生活の中で発作をあらかじめ患者本人へ知らせる手法への発展も期待される。
カップリング現象は、てんかんの病態とも密接に関連していると考えられ、将来的にはてんかんの病態解明、てんかん診断や治療への応用にもつながる、と研究グループは述べている。
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・日本医療研究開発機構 プレスリリース