■アステラスは過去最高益
国内製薬大手の2016年3月期決算が13日、出揃った。売上がほぼ横ばいにとどまったエーザイを除き、増収営業増益を達成する好決算となった。武田薬品は、売上1兆8000億円を突破し、前期の最終赤字から一気に回復。アステラス製薬は、二桁の増収増益、売上・利益で過去最高を更新した。第一三共は、米子会社ルイトポルトが好調で、国内でも増収を確保。エーザイも8割の営業増益と成長回帰にメドをつけた。しかし、国内が薬価改定年となる今年度は、エーザイ以外、一転して減収を予想。特に第一三共は、主力の降圧剤「オルメサルタン」の米国特許切れを控え、厳しい年になりそうだ。

武田薬品は、1.7%の増収。降圧剤「カンデサルタン」や糖尿病治療薬「ピオグリタゾン」といった主力品から新製品主体にシフトする製品構成の若返りが実を結びつつある。
重点領域の消化器、癌、中枢神経系の売上全体に占める割合が52%に上昇。消化器領域では新製品の潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」が前期比3倍強と成長した。その他のグローバル製品では、逆流性食道炎治療薬「デクスラント」や抗うつ剤「ブリンテリックス」が伸びた。
海外売上収益は、5.1%増と右肩上がりに増えているものの、新興国は医療用医薬品の減収で伸びきれなかった。国内は主力品の特許切れを新製品でカバーしきれず、3.5%減となった。海外売上比率は61.9%、医療用医薬品に限ると67.1%とそれぞれ約2ポイント上昇した。
アステラス製薬は、癌と泌尿器過活動膀胱(OAB)のフランチャイズが好調。抗癌剤「エンザルタミド(一般名)」が化学療法前の去勢抵抗性前立腺癌適応で拡大し、2000億円を突破。癌領域全体では3000億円台に乗せた。泌尿器OABでも「ベシケア」が横ばいだった一方、「ミラベグロン(一般名)」が前期売上から約5割増となり、二桁成長を達成した。
国内では、輸出を含めた全体で見ると、増収を死守できなかったが、医療用医薬品では0.3%増となった。グローバル製品に加え、国内で販売する降圧剤「ミカルディス」やCOPD治療薬「シムビコート」などが健闘。海外では全地域で増収となり、海外売上比率は63.8%と3.8ポイント上昇した。
第一三共は、印ランバクシー売却後のスタート年度となったが、7%の増収となった。オルメサルタンは、日本と欧州で競合薬の特許切れによる後発品の攻勢を受け、3.2%の減収。大型化を期待するグローバル製品の抗凝固剤「エドキサバン(一般名)」の立ち上がりも鈍い中、米子会社ルイトポルトが5割近い増収を達成した。
国内は、4.6%増と製薬大手勢で唯一の増収企業となった。抗潰瘍剤「ネキシウム」が同社の国内トップ製品となり、アルツハイマー病治療薬「メマリー」も二桁成長。ワクチンと後発品も二桁の伸びを見せた。
エーザイは、5期ぶりの増収増益が期待されたが、0.1%減とわずかに届かなかった。抗癌剤「ハラヴェン」「レンビマ」が拡大したものの、アルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」、消化性潰瘍治療薬「パリエット」の売上減をカバーしきれなかった。国内は4.2%減の一方、海外は全地域で増収を確保し、海外売上比率が再び50%を超えた。
利益面では、アステラスが原価率改善により、コア営業利益で23%増、フルベースでも34%増と二桁増益を達成した。武田も研究開発費の圧縮により前期赤字から1300億円台の営業黒字に転じた。エーザイは販管費と研究開発費の減少で約8割の営業増益。第一三共は、前期にプレキシコンの抗癌剤「ゼルボラフ」の減損損失があったため、7割の営業増益で着地。ただ、純利益は前期に印サン・ファーマの株式売却益を計上していたため、7割の大幅減益となった。
17年3月期は、エーザイは増収を見込むが、その他は薬価改定による国内事業の不振と為替影響により、減収を予想。利益面では、武田がイスラエルのテバ社への長期収載品事業売却による譲渡益で増益、アステラスが微増益、オルメサルタンの特許切れに直面する第一三共が二桁減益、エーザイは営業増益・最終減益を見込む。