RAS野生型転移性結腸・直腸がん患者の一次治療試験
ドイツのメルク社は4月25日、中国のピボタル第3相TAILOR試験において、RAS野生型転移性結腸・直腸がん(mCRC)患者を対象とした「アービタックス(R)」(一般名:セツキシマブ)+FOLFOXの併用療法が、FOLFOX単独療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)の有意な延長を達成したことを発表した。
mCRC患者の約半数はRAS野生型、残りの半数はRAS変異型だ。mCRC患者のRAS変異状態を評価した研究結果から、セツキシマブなどの抗上皮成長因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体薬により、RAS野生型mCRC患者の予後が改善することが明らかになっている。
セツキシマブは、EGFRを標的とするIgG1モノクローナル抗体。EGFRに対して特異的に結合するという点で、従来の標準的な化学療法とは異なる作用機序をもつ。EGFRに結合することによって受容体の活性化と下流のシグナル伝達が阻害され、正常組織への腫瘍細胞の増殖、浸潤と転移が抑制。また、化学療法や放射線療法によって引き起こされた損傷を修復する腫瘍細胞の活性を抑制し、腫瘍内血管新生を抑制するとも考えられており、それによって腫瘍の増殖を全体的に抑えるとされている。
中国での承認取得に向け、関係当局と連携
今回結果が発表されたTAILOR試験は、中国のRAS野生型mCRC患者を対象とする一次治療において、アービタックス+FOLFOXの併用療法を、FOLFOX単独と比較し評価することを目的として設計された、多施設共同・無作為化・非盲検第3相試験。この試験には、RAS野生型mCRC患者397人が登録され、主要評価項目はPFSだった。副次的評価項目は、全生存期間、最良総合効果、治療成功期間、肝転移の根治切除率。
また、安全性については、他のピボタル試験で観察されたプロファイルと同様であり、予測できない安全性上の知見は認められなかった。全試験結果は、今後の国際学会で発表される予定だという。
アービタックスは、現在世界90か国以上で販売承認を取得。メルク社は、同剤を一次治療薬として中国の患者にできる限り早く提供するため、関係当局と連携し、承認取得に向けて取り組むとしている。
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・メルクセローノ株式会社 プレスリリース