ゲノム全領域においての振る舞いが不明だった「Sp7/osterix」
東京大学は5月10日、骨形成に必須の転写制御因子「Sp7/osterix」による遺伝子発現制御の様子を骨芽細胞のゲノム全域で調べ、Sp7/osterixの作動様式とその進化学的な意義を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の大庭伸介特任准教授、南カリフォルニア大学の北條宏徳研究員ならびにアンドリュー・マクマホン教授ら共同研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Developmental Cell」に掲載されている。
画像はリリースより
人間の骨は骨芽細胞よって作られており、Sp7/osterixという遺伝子発現のスイッチとして働く蛋白質が正常に機能して、骨芽細胞の形成に関わる遺伝子を正しく発現させることが必要だ。一部のゲノム領域において、Sp7/osterixが遺伝子発現を制御する機構は明らかとなっていたが、ゲノム全領域においての振る舞いは不明なままだった。
Sp7/osterixがDlxホメオボックス転写因子と結合、間接的にゲノム領域に結合して遺伝子発現を調整
これまでSp7/osterixが直接特定のゲノム領域(GCボックス)に結合することで、遺伝子発現を制御していること考えられていた。しかし、今回の研究では、Sp7/osterixが別の蛋白質(Dlxホメオボックス転写因子)と結合して間接的にゲノム領域に結合して遺伝子発現を調整していることが明らかになったという。
さらに、異なる生物のゲノムの解析によって、Sp7/osterix蛋白質と今回新たに発見された機構は、脊椎動物に特徴的なものであることが判明。骨芽細胞が現れたことに伴って獲得された機構であることが示唆されたとしている。
この研究成果は、ゲノム変異がもたらす骨格系の変性疾患・先天疾患の理解、それらの治療や骨格再生におけるゲノム創薬へ貢献することが期待されるという。北條研究員と大庭特任准教授は「本研究は、遺伝情報から骨の設計図を作る・それをもとに病気を治す、という研究目標のマイルストーンになる成果です」と述べている。
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