■目標達成後は多様性の時代
厚生労働省医政局経済課の大西友弘課長は、薬事日報紙の日本ジェネリック製薬協会との対談で、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針)で示された“後発品の数量シェア80%”に言及。「これまでとは登る山が変わったということ」と述べ、後発品メーカーに対して「単に目標値クリアに向けて数量を増やすのではなく、質的な変化への転換が必要になる」との認識を示した。さらに後発品80%達成後は、「国内の医薬品市場が飽和状態になる」ことから、後発品と先発品メーカーの垣根があいまいになり、独自の企業戦略を必要とする“多様性の時代”が来ると予測。後発品メーカーには海外展開への挑戦を求めた。
骨太方針では、後発品の数量シェア80%の目標達成について、「2018~20年度末までの間のなるべく早い時期」と幅を持たせた上で、「17年央に70%以上」とする中間目標を新設。その時点の進捗状況を踏まえて具体的な達成時期を決定するよう求めている。
大西氏は、後発品80%について、「従来の延長線上にある目標ではなく、荒波を乗り越えながら到達する世界」と強調。目標達成の道程を登山に例え、「これまでは近所の山を登れと言われ、トライしていたが、その途中で急に富士山に登ることになってしまったようなもの」と説明した。
近隣の低い山を登るのであれば、「特別な装備を必要としなかったが、富士登山であれば登山靴に履き替えて、雨風を凌げる服装を用意しなければならない」と分析し、企業に行動変容を求めた。
その上で、「後発品80%時代に対応するためには、業界全体の体力を確保し、各社が戦略を持って事業を進め、これまでのような量的拡大ではなく質的に変化していく必要がある」と指摘。製剤工夫や包装の改良といった品質面での競い合いによって、「市場を活性化していくべき」と強調した。
80%達成に向けては、後発品メーカーが安心して生産体制を強化できるよう、行政としても施策の方向性を早めに示すよう配慮したい考えを示した。
一方、80%達成後の市場環境については、「国内の医薬品市場が飽和状態になり、後発品メーカーの海外展開が現実味を帯びてくる」との見方を示した。
さらに、「後発品の使用促進が加速すれば、後発品メーカーだけでなく、先発品メーカーも変わっていかざるを得なくなり、それぞれの垣根があいまいになってくる」と予想。
先発品メーカーの中で、より後発品を強化する企業も出てくれば、後発品メーカーの中にも先発品メーカーと同水準の研究開発力を身につけ、「両輪で事業展開していく企業も登場してくる可能性がある」と語った。
医薬品市場のあるべき姿として、「後発品メーカー、先発品メーカーというカテゴリーで捉えるのではなく、各社が個々の戦略や強みに基づいて事業展開を進められる“多様性”が大事になる」と強調。必ずしも後発品メーカー同士が統合しなければならないということではなく、「各社が個性を発揮できれば、市場内での共存は可能ではないか」との考えを示した。