医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 制御性T細胞が大腸がんの進行に関与、FOXP3を弱発現する細胞群ががん免疫を促進-阪大

制御性T細胞が大腸がんの進行に関与、FOXP3を弱発現する細胞群ががん免疫を促進-阪大

読了時間:約 1分45秒
2016年04月28日 PM01:00

がん免疫治療において注目を集める制御性T細胞

)は4月26日、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの西塔拓郎博士、西川博嘉准教授、坂口志文教授らの研究グループが、大腸がんの組織内部まで進行したリンパ球において、制御性T細胞と見なされていたFOXP3陽性細胞の中に、FOXP3を弱発現する細胞群が多数存在し、がん免疫を促進することを発見したと発表した。この研究成果は「Nature Medicine」に同日付けで掲載されている。


画像はリリースより

がん免疫治療において抗腫瘍免疫に働く細胞群として、制御性T細胞が注目を集めており、この細胞群による免疫抑制をコントロールすることは、がん免疫治療をより効果的にするために必須のものであると考えられている。制御性T細胞は、FOXP3をマスター遺伝子として免疫抑制を司る細胞で、腫瘍内において種々の抗腫瘍免疫応答を抑制することにより、がんが免疫系からの攻撃を逃れるため、免疫逃避機構の重要な因子と考えられている。

そのため多くのがん腫において、腫瘍内浸潤制御性T細胞の存在は予後不良因子として報告されているが、大腸がんにおいては予後良好因子であるという、他のがん腫とは相反するような報告もなされており、大腸がんに対する制御性T細胞の免疫応答は明らかにされてこなかった。

腸内細菌を調整することによる大腸がん治療の可能性に期待

坂口教授ら研究チームは、これまで、FOXP3陽性細胞の中にも、抑制能を持たない細胞群が存在することを報告してきていた。このような細胞群は制御性T細胞を除去するようながん免疫療法を検討していく上で、極めて重要な問題だった。

そして今回、ヒト大腸がんに浸潤するリンパ球をより詳細に解析することで、大腸がんの組織内部の深くまで進行したリンパ球において、従来、制御性T細胞と見なされていたFOXP3陽性細胞の中に、FOXP3を弱発現する細胞群が多数存在し、がん免疫を促進することを発見。また、この細胞群は、免疫を抑制する能力を持たない活性型T細胞であり、大腸がんに付着する腸内細菌により腫瘍内で増加したIL-12などの炎症性のサイトカインによって誘導されることを解明したという。

さらに、この様なFOXP3を弱発現する細胞群が多数浸潤する大腸がんは予後が良好である一方、抑制活性をもつ制御性T細胞が多数浸潤する大腸がんは他のがん腫と同様に、制御性T細胞の浸潤が予後不良の原因になることも見出した。

この研究成果により、未だ一部の腫瘍でしか、がん免疫療法の効果が認められなかった大腸がんにおいて、制御性T細胞を標的としたがん免疫療法の可能性が示唆された。また、腸内細菌が腫瘍内炎症を介して腫瘍免疫を高める可能性があることが示され、腸内細菌のコントロールによる大腸がん治療への応用の可能性が期待されるとしている。(横山香織)

 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 排卵誘発剤「クロミフェン」、安価で迅速な新規合成法を開発-近大ほか
  • 急性期脳梗塞患者、脳のミエリン量が多いほど予後が良好と判明-広島大
  • 妊娠期の感染症/発達期の社会的ストレスがもたらす精神疾患の仕組みを解明-京都大
  • 僧帽弁逆流症に合併する重症三尖弁逆流症の特徴と予後の実態を調査-順大ほか
  • 化膿性脊椎炎、「後方固定術」による脊椎安定化が感染制御に寄与する可能性-筑波大
  • あなたは医療関係者ですか?

    いいえはい