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アトピー性皮膚炎の原因遺伝子を解明、JAK阻害剤・保湿剤で予防可能か-理研

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2016年04月28日 PM12:30

モデル動物を用いた発症メカニズムの解析を実施

理化学研究所は4月26日、遺伝子変異誘導によりアトピー性皮膚炎モデルマウス「Spadeマウス」を開発し、アトピー性皮膚炎発症のメカニズムを解明。発症の予防方法を発見したと発表した。


画像はリリースより

この研究は、理研統合生命医科学研究センター疾患遺伝研究チームの吉田尚弘チームリーダー(研究当時)、安田琢和研究員(研究当時)らの共同研究グループによるもの。同研究は米科学雑誌「Journal of Clinical Investigation」に掲載されるのに先立ち、オンライン版に4月25日付けで掲載されている。

アトピー性皮膚炎は、日本を含めた先進国の乳幼児によくみられる炎症性皮膚疾患であり、繰り返す掻痒感の強い湿疹と免疫グロブリン(IgE)産生上昇などによるアレルギー様反応が問題となる。遺伝的に皮膚バリア機能に障害がある人でアトピー性皮膚炎が発症しやすいことから、それが発症の遺伝的背景因子となることが示唆されていた。

しかし、遺伝的背景因子を持つヒトが、なぜアトピー性皮膚炎を発症するのか、詳しいメカニズムは分かっておらず、モデル動物を用いた発症のメカニズムの解析が望まれている。ところが、そのような発症経過を忠実に再現するモデルマウスはこれまで存在していなかった。

JAK阻害剤または保湿剤でアトピー性皮膚炎を予防

そこで、共同研究グループはエチルニトロソウレアという「化学変異原」をマウスに投与し、ゲノムに変異を起こすことにより、突然変異マウスを作製。その中から、掻破行動の強い皮膚炎を発症するマウスを選別した。このマウスは清潔な環境で飼育しても、生後8~10週間でアトピー性皮膚炎を発症するという。

病気の原因となる遺伝子変異を調べたところ、さまざまな細胞の増殖や分化に重要なサイトカインのシグナル伝達因子「JAK1」分子の遺伝子配列に点突然変異が生じ、JAK1のリン酸化酵素であるキナーゼ活性が増加していることを突き止めた。これにより、発症前から表皮細胞の古い角質が剥がれるときに発現するプロテアーゼ(ペプチドの加水分解酵素)群の遺伝子発現が上昇し、角質による皮膚バリアに機能障害が起こっていることも分かったという。

また、このマウスの皮膚にJAK阻害因子を塗ったところ、プロテアーゼの発現は抑制され、アトピー性皮膚炎の発症を遅らせることができた。しかも、軟膏基質として使われるワセリンを塗ることでも、発症の予防ができたという。このとき、皮膚バリア機能も正常と同等に保たれるだけでなく、真皮の炎症発生も抑制されることが明らかとなった。

ヒトのアトピー性皮膚炎でも同じことが起こっているのかどうかを調べるために、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚組織を調べたところ、6例中4例の表皮細胞でJAK1が活性化していることを発見したという。

さらに、皮膚での遺伝子発現を比較した結果、モデルマウスの皮膚では、複数のセリンプロテアーゼの発現が増加していることが判明。これにより角質が剥がれやすい状態になり、バリア機能が低下していると考えられるという。

研究グループは、今回作製したSpadeマウスを用いることによって、アトピー性皮膚炎発症に関わる複数の要因を分子レベル、細胞レベルで明らかにし、それぞれのターゲットを決めた発症予防法や治療法の確立が期待できるとしている。

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