新たにFMF、TRAPSおよびMKD/HIDSについて効能追加を申請
ノバルティス ファーマ株式会社は4月25日、「イラリス(R)皮下注用150mg」(一般名:カナキヌマブ(遺伝子組換え))について、遺伝性周期性発熱症候群のうち、新たに「家族性地中海熱」、「TNF受容体関連周期性症候群」、「メバロン酸キナーゼ欠損症/高IgD症候群」の治療薬として効能追加の承認申請を行ったと発表した。
遺伝性周期性発熱症候群は、炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-1βの過剰産生が原因で、慢性的な炎症反応や進行性の組織障害を引き起こす疾患。日常生活に支障を来すほどの高熱を伴う全身性炎症発作を繰り返し、また炎症性サイトカインの標的となる臓器に漿膜炎、好中球性皮疹、粘膜潰瘍、関節痛・関節炎、無菌性髄膜炎・頭痛など特有の症状と徴候が伴う。
この遺伝性自己炎症疾患のグループには、クリオピリン関連周期性発熱症候群(CAPS)、家族性地中海熱(FMF)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)およびメバロン酸キナーゼ欠損症/高IgD症候群(MKD/HIDS)が含まれる。FMFは、周期性発熱症候群の中で最も発症頻度の高い疾患だが、日本における患者数は約300人。TRAPSの国内患者数は少なく、10~30人程度と報告されている。また、国内におけるMKD/HIDS患者数は4家系6名が報告されているという。
全身性炎症をコントロールでき、長期に安全使用できる治療法の確立を
現在、TRAPS、MKD/HIDSの治療には、経口抗炎症薬やコルチコステロイドが多く使用されており、解熱や発熱を伴う症状の軽減にはある程度の効果が得られているが、発作を予防することはできていない。FMFの発作時は有効な治療がなく、ステロイドや免疫抑制剤は無効だ。また発作予防には、コルヒチンの長期継続投与が行われ、約2/3の症例で発作を完全に抑制し、約1/3で頻度の減少がみられるが、約5%は無効だという。よって、これらの疾患に対して再発性の発熱を伴う全身性炎症を良好にコントロールでき、長期に安全に使用できる治療法の確立が望まれているのが現状だ。
イラリスは、炎症性サイトカインの1つであるヒトIL-1βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1モノクローナル抗体。IL-1βに結合してIL-1β受容体への結合を阻害し、その活性を中和することで炎症を抑えるという。
同剤は、CAPSについて世界約70か国で承認されており、日本においても2011年9月に承認を取得している。また、カナキヌマブは、IL-1βが重要な役割を果たす炎症性の疾患である「心筋梗塞後患者における心血管イベントのリスク軽減」および「全身型若年性特発性関節炎」についても開発を進めており、国内では臨床第3相試験を実施中としている。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース