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神経保護効果をもつ新規化合物「KUS剤」で緑内障の進行を抑制-京大

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2016年04月26日 PM03:00

ストレス下にある細胞を細胞死から守る効果を持つKUS剤

京都大学は4月22日、神経保護効果をもつ化合物「」が、緑内障の進行を抑制することを、3種類のモデルマウスを用いて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の池田華子准教授、同生命科学研究科の垣塚彰教授らの研究グループと、同医学研究科眼科学教室の吉村長久特命教授、ダイトーケミックス株式会社らが共同で行ったもの。研究成果は、英オープンアクセス科学誌「Heliyon」に4月19日付けで掲載されている。


画像はリリースより

研究グループはこれまでに、VCP蛋白質のATP消費(ATPase活性)を抑制する化合物の探索を行い、 KUS(Kyoto University Substance)剤を新規合成していた。同時に、KUS剤がストレス下にある細胞を細胞死から守る効果を持つことを示してきたが、今回はこれらの化合物に緑内障の進行抑制効果があるかどうかを、3種のモデルマウスで検証したという。

神経保護という新たな観点からの治療薬の開発に期待

緑内障の発症要因の1つは、体内で産生される(内在性)興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸による神経の過剰興奮が網膜神経の細胞死を招くためだと考えられている。そこで今回の実験では、マウスの眼内にグルタミン酸と同じ神経興奮をもたらすNMDAという物質を注射し、緑内障で観察される網膜神経節細胞障害を起こしたうえで、KUS剤を投与。その結果、KUS剤を投与したマウスでは投与しなかった個体に比べ、網膜神経節細胞の減少が抑制されることが分かったという。

続いて、内在性のグルタミン酸によって緑内障を発症するGLAST遺伝子のノックアウトマウスでKUS剤の効果を検証。KUS剤の投与がないマウスでは、網膜の神経節細胞の数や網膜の神経線維の数が減少し緑内障兆候が見られるが、KUS121を10か月間投与したマウスでは、その減少が抑制されていた。さらに、視機能を確認するため網膜電図検査を実施したところ、KUS121投与群では投与していないマウスと比べて網膜神経節細胞の機能を表す波の振幅が大きく、視機能の低下も抑制されていることが明らかになったという。

また、眼圧が高くなるタイプの緑内障モデルマウス(DBA/2Jマウス)でも検証を実施。KUS 剤を投与していないマウスでは、眼圧が上昇後しばらくすると、緑内障患者に見られる特徴的な所見である視神経乳頭の陥凹の拡大が見られたが、KUS剤を投与したマウスでは、 陥凹拡大が抑制されていることが確認できたという。

今後について研究グループは、国際的な基準に基づいた長期にわたる安全性試験を行うため、実際に患者に投与できるまでに5年はかかるとしている。その一方、治療法の存在しない急性の眼疾患に対しては、KUS剤を眼内に注射し、安全性や神経保護効果を検討する医師主導治験を年内に開始できるように準備を進めていくという。

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