シスプラチンなど既存の白金製剤とは異なるメカニズムで
国立遺伝学研究所(NIG)は4月21日、近年開発された5-H-Yという新たな白金化合物が、シスプラチンなどの既存の白金製剤とは異なるメカニズムによって抗がん作用を示すことを明らかにしたと発表した。
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この研究成果は、遺伝研の今井亮輔総合研究大学院大学生、田村佐知子テクニカルスタッフ、前島一博教授と、鈴鹿医療科学大学の米田誠治准教授、国立国際医療研究センターの志村まり室長、大阪大学の山内和人教授、遺伝研の鐘巻将人教授、東レリサーチセンターの飯田豊部長、立命館大学の吉川祐子客員教授、米コロラド州立大のHansen教授の各グループによるもの。英科学誌「Scientific Reports」オンライン版に4月5日付けで掲載されている。
ゲノムDNAの正確な複製や分配、転写は細胞が生きる上で必須の機構であり、それゆえこれらの機構は抗がん剤の標的となり得る。シスプラチンなどの白金製剤は「切れ味鋭い」抗がん作用をもち、現在、最もよく使われる抗がん剤のひとつであり、これらの抗がん剤は、DNAに直接共有結合性の架橋を形成することで複製を阻害し、抗がん作用を示すことが知られている。
シスプラチン耐性細胞においても抗がん作用を示すことを確認
研究グループは今回、近年開発された5-H-Yという新たな白金化合物が、シスプラチンなどの既存の白金製剤とは異なるメカニズムによって抗がん作用を示すことを明らかにした。5-H-Yはシスプラチンと同様に、DNAの複製やRNAの転写を阻害することによって細胞の増殖を抑制するが、DNAへの架橋はほとんど起こさず、クロマチンを凝集させる作用があることが判明。実際に、シスプラチン耐性細胞においても5-H-Yは十分な抗がん作用を示すことも確認されたという。
この5-H-Yの抗がんメカニズムは、今後新たな抗がん剤を開発する上での重要な知見になると考えられると研究グループは述べており、さらなる研究に期待が寄せられる。
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・国立遺伝学研究所 プレスリリース