顕著な血管新生阻害に繋がる作用機序解析などの成果
エーザイ株式会社は4月20日、同社創製の抗がん剤「レンバチニブメシル酸塩」(一般名)と抗がん剤「エベロリムス」の併用投与時における、顕著な血管新生阻害に繋がる作用機序解析ならびに動物モデルを使った腎細胞がんに対する抗腫瘍効果についての非臨床研究成果を発表した。この発表は、第107回米国がん研究会議(American Association for Cancer Research:AACR)において行われた。
レンバチニブは、経口投与可能な新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤。現在、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州、韓国、カナダなど40か国以上で承認を取得。アジア諸国、ロシア、オーストラリア、ブラジル、メキシコなど世界各国で申請中である。米国では「局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん」の適応で、日本では「根治切除不能な甲状腺がん」の適応で、欧州では「成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は再発の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)」の適応で承認を取得している。
また同剤は現在、進行または転移性腎細胞がんに係る適応で、米国と欧州において承認を申請中。米国食品医薬品局(FDA)より優先審査品目に指定、欧州医薬品庁(EMA)より治療上の革新性の観点からの貢献が期待される薬剤として、迅速審査の指定を受領している。日本においても、申請に向けての協議を行う予定としている。
併用投与により血管新生に対する阻害活性が相乗的に高まることも示唆
今回、AACRで発表した研究成果は、血管内皮増殖因子(VEGF)あるいは線維芽細胞増殖因子(FGF)遺伝子の過剰発現により血管新生が誘導された各モデルマウスに対し、レンバチニブ(7.5mg/kg)とエベロリムス(15mg/kg)を併用投与したところ、単剤の高投与量(レンバチニブ単剤:10mg/kg、エベロリムス単剤:30mg/kg)と比べて、いずれのモデルマウスにおいても併用投与で顕著ながん増殖抑制作用が観察されたというもの。また、試験管内の試験として、併用投与においてはその両方の作用機序によって血管新生をより強く阻害することが確認され、中でもFGFにより誘導される血管新生に対する阻害活性は、併用投与により相乗的に高まることも示唆されたという。
また、別の研究成果として、ヒト腎細胞がん由来の細胞株をマウスに皮下移植した異種移植モデルに対し、レンバチニブ(10mg/kg)とエベロリムス(30mg/kg)の併用、レンバチニブ単剤(10mg/kg)、エベロリムス単剤(30mg/kg)を投与したところ、併用投与においてのみ、がん細胞の細胞死が顕著に観察されたという。さらにレンバチニブ投与では微小血管密度の低下が、エベロリムス投与では増殖細胞数の低下がみられ、併用投与ではその両方の作用が観察されたとしている。
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・エーザイ株式会社 ニュースリリース