2剤併用療法による急性骨髄性白血病治療の可能性を評価
大塚製薬株式会社は4月20日、新規がん治療薬の開発を目指す米子会社アステックス社が、ロシュ・グループの傘下にある米ジェネンテック社と共同治験の契約を締結したと発表した。
共同治験は、アステックス社の次世代DNAメチル化阻害剤「グアデシタビン」(SGI-110)と、ジェネンテック社が開発中の抗PD-L1抗体「atezolizumab」(アテゾリズマブ)の併用療法により、急性骨髄性白血病(AML)治療の可能性を評価する。開始段階の第1b相試験では、併用療法の安全性と薬効薬理を検討するという。
AMLは、成人の白血病の中でも最も多い疾患。米国では、年間20,000人以上が新たに発症している。60歳未満のAML患者の60~75%は、標準的な寛解導入化学療法により完全寛解に至るが、患者の30~40%は亡くなっている。また、60歳以上の患者の場合では、寛解率は50%未満、治癒率は10%未満、平均生存率は1年未満であり、予後がさらに悪くなる。
これらの治療成績は、ここ30年間でほとんど改善されてなく、患者の治療選択肢は限られている。特に高齢の患者においては合併症を有することから、強力な寛解導入化学療法を行えないため、効果的で副作用が少ないAMLの治療法が求められている。
グアデシタビン投与で免疫療法への反応を増強するという仮説
アステックス社のグアデシタビンは、次世代の低分子DNAメチル化阻害剤であり、1回に少量を皮下に投与する注射剤。注射用デシタビンと比べて、活性代謝体であるデシタビンを体内で長く作用させ、骨髄などの組織に効率的に到達するようデザインされている。同剤は、DNAメチル化を阻害することにより、がん細胞内の不活化したがん抑制遺伝子の機能を回復させ、骨髄異形成症候群(MDS) やAMLの患者に対する治療効果を発揮するという。
また、ジェネンテック社のアテゾリズマブは、がんや腫瘍浸潤免疫細胞に出現するPD-L1と呼ばれるタンパク質を標的として結合するように設計された開発中のヒト化モノクローナル抗体。PD-L1は、共にT細胞表面上に発現しているPD-1およびB7.1タンパク質に作用し、T細胞の機能を阻害。これらの影響をブロックすることで、同剤はT細胞を活性化させて、がん細胞を効率的に発見し攻撃する機能を回復させるという。
今回の共同治験では、DNAメチル化を阻害するグアデシタビン投与により、患者の免疫システムを前もって賦活化させ、免疫療法への反応を増強させるという仮説を検証。この仮説は、グアデシタビンのDNAメチル化阻害により腫瘍関連抗原の再発現や、さらにPD-1、PD-L1あるいはPD-L2などの免疫チェックポイントの発現を誘導することで、腫瘍がより免疫療法に反応しやすくなり、アテゾリズマブなどの免疫チェックポイント阻害抗体に対する治療感受性が亢進するという知見に基づくものとしている。
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・大塚製薬株式会社 ニュースリリース