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肝臓がん300例の全ゲノムシーケンス解析を実施-国がんら

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2016年04月14日 AM11:30

単独のがん種の全ゲノムシーケンス解析数としては世界最大規模

(NCC)は4月12日、日本人300例の肝臓がんの全ゲノムシーケンス解析を実施し、それらのゲノム情報を全て解読したと発表した。


画像はリリースより

この研究は、同研究所がんゲノミクス研究分野の柴田龍弘分野長、十時泰ユニット長、理化学研究所統合生命医科学研究センターゲノムシーケンス解析研究チームの中川英刀チームリーダーら共同研究グループによるもの。(ICGC)の一環で、単独のがん種の全ゲノムシーケンス解析数としては世界最大規模になるという。研究成果は、国際科学雑誌「Nature Genetics」に4月11日付けで掲載されている。

肝臓がんは日本を含むアジアで発症頻度が高く、主な原因は肝炎ウイルスの持続感染だ。B型(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の感染に伴う慢性肝炎から、肝硬変を経て、高い確率で肝臓がんを発症する。さまざまな治療法があるが、効果は十分ではなく、ゲノム情報に基づく発がん分子メカニズムの解明と新たな治療法や予防法の開発が求められている。

ゲノム構造異常や非コード領域の変異を多数同定

今回、研究グループは、日本人300例の肝臓がんの腫瘍と正常DNAの全ゲノムの塩基配列情報を、次世代シーケンサー(NGS)と東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピュータ「SHIROKANE」で解読し、がん細胞のゲノム変異を網羅的に解析。データ総量は、約70兆個もの塩基配列情報に上り、ゲノム異常は1つの腫瘍あたり約10,000カ所であったという。

また、既知のがん関連遺伝子のゲノム構造異常に加え、新規のがん遺伝子のゲノム構造異常、HBVとアデノ随伴ウイルス()の肝臓がんゲノムへの組み込み、遺伝子発現に影響を及ぼす可能性のある非コード領域や非コードRNAの変異も多数検出した。さらに肝臓がんの発生や進行に深く関与すると考えられるたな変異的特徴(シグネチャー)も同定したという。

これらのゲノム情報によって肝臓がんは6つに大きく分類され、肝臓がん術後生存率はこの分子分類によって異なることが判明。今後、がんのゲノム配列情報に基づいた肝臓がん治療の個別化や新規の治療法・予防法開発へ発展する可能性があるとして期待が寄せられている。

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