ヒトに感染するための接着器官をナノメートルレベルで明らかに
大阪市立大学は4月12日、ヒトに肺炎を発症させる細菌「マイコプラズマ・ニューモニエ」が、ヒトに感染するために接着と滑走を行うための装置である接着器官の三次元構造を、世界で初めてナノメートルレベルで明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大理学研究科の宮田真人教授と、大阪大学大学院生命機能研究科の難波啓一教授らの共同研究チームによるもの。研究成果は、米微生物学専門オンライン誌「mBio」に4月12日付けで掲載されている。
マイコプラズマは、菌体の片側に小さな突起である接着器官を形成し、この突起で宿主組織の表面にはりつき、移動する滑走運動を行う。この接着器官について、同大は2015年12月4日に、器官を構成しているタンパク質の存在およびその位置をつきとめる研究を発表していた。
滑走装置の電子顕微鏡像を数百の角度から撮影
今回、大阪大学との共同研究により、電子線クライオトモグラフィーという方法を用いることで、ナノメートルレベルの三次元像を得ることに成功。菌体を凍結し、凍結したままの滑走装置の電子顕微鏡像を数百の異なった角度から撮影した。それらの像からCTスキャンと同様の方法で元の構造を再構築したという。
その結果、滑走装置の三次元像がナノメートルレベルではじめて示され、「突起が格子状に並んでいること」「蜂の巣のような硬い構造があること」「蛇腹のような伸び縮み可能な構造があること」が判明。滑走の「あし」として働く突起がP1アドヘジンというタンパク質であることが判明したという。
同研究グループは、前回発表と今回の研究で得た結果を合わせ、滑走運動メカニズムの解明にさらに踏み込むことに成功したと報告。滑走と接着に必須のタンパク質の構造は、マイコプラズマ感染症の対策のための重要な情報として、今後の研究に期待が寄せられる。
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・大阪市立大学 プレスリリース