骨密度の上昇、発達遅滞、筋緊張低下などを示す骨硬化性骨幹端異形成症
理化学研究所は4月12日、骨密度が異常に上昇する骨硬化性骨幹端異形成症の原因遺伝子の1つ「LRRK1」を発見。さらに、LRRK1の機能喪失変異により、骨吸収作用を担っている破骨細胞が機能不全を起こし、異常に骨密度が上昇するメカニズムを明らかにしたと発表した。
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この研究は、理研統合生命医科学研究センター骨関節疾患研究チームの池川志郎チームリーダー、飯田有俊上級研究員、横浜市立大学学術院医学群の松本直通教授、東京医科歯科大学大学院の中島友紀教授ら共同研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Journal of Medical Genetics」オンライン版に4月7日付けで掲載されている。
骨硬化性骨幹端異形成症は、大理石骨病の1種で常染色体劣性遺伝病。管状骨(内部が空洞で細長い棒状の骨)の骨幹端を中心とする全身の骨密度の上昇、発達遅滞、筋緊張低下などの症状を示す。
共同研究グループは、骨硬化性骨幹端異形成症の患者3人の臨床情報とDNAを収集。次世代シーケンサーによるエクソーム解析により、1人の患者においてLRRK1に7塩基の欠失変異を発見。この変異により、C末端が延長した異常なLRRK1タンパク質が作られると考えられるという。
過去の研究で、LRRK1を人為的に欠損させた「LRRK1ノックアウトマウス」は、重度の大理石骨病に似た表現型を示すことが知られていた。しかし、この表現型がヒトの大理石骨病のうちのどの疾患に対応するかは不明だったという。
同症や類縁疾患の治療法、新たな骨粗しょう症の治療薬の開発にも期待
そこで、LRRK1ノックアウトマウスのX線像、組織像を詳しく調べた結果、骨硬化性骨幹端異形成症患者とLRRK1ノックアウトマウスの表現型(骨格異常)が極めて類似していることが判明。また、正常マウスを使った解析により、LRRK1は破骨細胞に極めて強く発現し、破骨細胞の分化後期で発現が増強することを発見したという。
さらに、LRRK1ノックアウトマウス由来の破骨細胞に正常なLRRK1を導入したところ、骨吸収活性が回復したが、変異したLRRK1を導入しても骨吸収活性は回復しなかった。このことから、LRRK1は破骨細胞の骨吸収機能に必須で、変異したLRRK1タンパク質ではその機能が消失していることを証明したとしている。
今回、骨硬化性骨幹端異形成症の原因遺伝子の1つを発見したことによって、遺伝子診断、早期発見、保因者診断が可能になるという。また、LRRK1タンパク質の機能解析を通じて、同症や類縁疾患の治療法開発が期待できるとしている。
また現在、大理石骨病関連疾患の原因遺伝子を分子標的として骨粗しょう症治療薬の開発が進み、カテプシンK阻害薬、抗RANKL抗体、抗スクレロスチン抗体など多くの成功例が出ている。LRRK1ノックアウトマウスは、大理石骨病関連疾患の原因遺伝子のノックアウトマウスの中でも、最も強い骨密度の上昇を呈するため、このマウスを使うことでLRRK1タンパク質を分子標的とした創薬研究による新たな骨粗しょう症の治療薬の開発も期待できるとしている。
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