体内への蓄積性が高い放射性ストロンチウムに関する報告
東北大学は4月11日、東北大震災に伴う福島第一原子力発電所事故で旧警戒地区内に残された被災牛の歯の中から、福島原発事故によって放出された放射線ストロンチウム(Sr-90)を初めて検出したと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大歯学研究科、理学研究科、農学研究科、加齢医学研究所等からなる共同研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」誌に掲載された。
共同研究グループは、福島第一原発事故の後、旧警戒区域に放たれた牛の歯を収集、それらの歯に含まれるSr-90の量を測定し、評価してきた。原発事故に関連してセシウムやヨウ素に関する報告は多くあるが、体内への蓄積性が高いSr-90に関する報告は、測定法の難しさもあり、ごく限られていた。
この研究では、歯が形成時にストロンチウムを取り込み、歯の中にそのまま保持し続ける点に着目。これは、代謝のある他の臓器とは大きく異なるため、歯の中には過去に動物が体内に取り込んだSr-90の記録が残るという。
歯の比放射能値測定で内部被ばく線量を評価できる可能性
研究グループは、年齢の違う8頭の牛から9本の歯をそれぞれ採取し測定を行った。その結果、原発事故以降に形成された歯のSr-90濃度が、事故前と比べて高くなっていることを明らかにした。このことから、歯の中のSr-90の放射能量から個体の内部被ばく線量を評価する手がかりを得られることが分かった。
また、原発事故により、環境中に存在する安定ストロンチウムにSr-90が加わったため、環境中のSr-90と安定ストロンチウムの比(比放射能値)は、Sr-90が降下した場所と事故からの経過時間により異なってくる。今回の研究から、歯の中の比放射能値は、ウシの採取場所と時期、年齢、歯の形成段階により異なることも分かったという。
これらの結果から、歯の比放射能値を測定することにより、環境中の放射能汚染の時間経過、体内に取り込まれたSr-90の総量を過去にまで遡って推定し、内部被ばく線量を評価できる可能性があることが示されたとしている。
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・東北大学 プレスリリース