■15年度薬学教育評価-演習の予備校委託も問題視
薬学教育評価機構は、2015年度の6年制薬学教育評価を専門分野別に行った結果をまとめた。昨年度の対象となった近畿大学、昭和薬科大学、摂南大学、崇城大学、千葉大学、東京薬科大学、東京理科大学、東北薬科大学、兵庫医療大学、名古屋市立大学、北陸大学の11校のうち、10大学は評価基準に適合と認定されたが、北陸大は評価基準の中項目5項目に重大な問題点が認められるとして、総合判定を保留した。ただ、適合と認定された複数の大学でも、薬剤師国家試験対策科目で必修の「総合演習」の授業を予備校に委託していることが問題視され、改善が求められた。認定期間は2023年3月31日まで。
今回、昨年度の評価対象となった11校の薬学教育プログラムについて評価を行った結果、北陸大を除く10校は適合と認定された。北陸大は、中項目5項目に重大な問題点が認められるとして、総合判定が保留となり、再評価を受けることになった。
北陸大の評価で、重大な問題点が認められると判定されたのは、▽カリキュラム編成▽実務実習▽問題解決能力の醸成のための教育▽学生の受け入れ▽成績評価・進級・学士課程修了認定――の5項目。評価結果では、カリキュラムが薬学共用試験と薬剤師国家試験の合格対策に偏っていると指摘した。
具体的には、国試受験対策の学習に5年次と6年次の多くの時間を充てていることで卒業研究の実施期間が圧迫され、成績の評価方法にも問題があるため、問題解決型学習が体系的、効果的に実施されていないとした。また、4年次後期の大半を共用試験のCBT対策に充てていることが2年次、3年次の過密カリキュラムの原因となり、2~3年次で留年者が増加する一因となっている問題点を指摘した。
留年率と退学率が恒常的に高いことも指摘。入学定員、基礎学力の確認を含めた入学システムが適切に機能していない問題点を挙げたほか、「総合薬学演習」の単位認定試験の合否が実質的な卒業判定基準となっていたり、一部学生に国試終了後の3月末に卒業認定していることなどを問題視した。
さらに、シラバスの記載に不備が認められたり、薬学専門教育が講義に偏り到達目標の学習領域に合った方策が設定されていない科目が多数存在するなど、多くの問題点が指摘され、総合判定は保留となった。
■適合校に対しても問題点を指摘
一方、適合と認定された昭和薬大に対しても、必修科目の「最終総合演習」の全ての授業を国家試験対策予備校に委託し、その不合格だけで卒業できない学生が相当数いることを重大な問題と指摘。専任教員が担当し、大学が責任を持って実施するよう改善を求めた。崇城大に対しても、必修科目の「総合薬学演習III」の大部分を予備校に委託していることを不適切とし、その不合格により、6年生の約4分の1が卒業延期となっている現状を早急に改善するよう求めた。
兵庫医療大でも、国試対策科目で必修の「総合演習」の試験が不合格となった6年次留年生の次年度を継続履修とし、授業の大部分を予備校の講習会への参加で代替していることについて「指導責任を果たしていない」と指摘。これら是正に向けた早急に適切な措置を講じ、対応状況に関する報告書の提出を要請した。
東北薬大が6年次留年生への対応として、単位を取得していない科目の再履修のコマ数が正規履修時より少なく、予備校による講義の受講状況を「卒業試験」の受験資格にしていることについても不適切とし、対応の改善を求めた。
東京薬大が共用試験の合格を「事前実務学習(実務実習事前学習II)」の単位認定条件にしていることに対して、早急に適切な措置を講ずることを求めると共に、その対応状況に関する報告書の改善が認められるまで毎年提出するよう要請した。