財務省は4日、財政制度等審議会財政制度分科会で薬剤費総額が増加している現状に問題意識を示した。また、日本赤十字社医療センター化学療法科の國頭英夫部長は、20mgで15万0200円、100mgで72万9849円の薬価がついた小野薬品の抗癌剤「オプジーボ」を例に挙げ、癌治療における高額な薬剤の使用のあり方について問題提起した。
この日の会合では、「経済・財政再生計画」の着実な実施(社会保障)をテーマに議論。財務省は、薬価について「市場実勢価格を反映して継続的にマイナス改定がなされているものの、薬剤費総額は高齢化などによる使用量の増加や年度途中の新薬の保険収載などで増加している」と指摘した。
國頭氏は、オプジーボについて、▽有効な集団を治療前に特定できない▽有効例で、いつまで使うべきかが不明▽無効例でも偽性増悪があるため、止め時が不明――といった課題があることを指摘。
その上で、国内の肺癌患者(2015年推定13万人程度)のうち、少なく見積もって5万人が同剤の対象になるとし、これらの患者に1年間、同剤を投与した場合、薬剤費が1兆7500億円に上るとの見込みを示した。
國頭氏は、「これは一つの疾患に対する一つの薬に過ぎない」などとし、「高い薬はどんどん出てくる。しかも、千人単位ではなく百万人単位に対して出てきて、財政を逼迫する」と指摘。保険財政の破綻を回避するため、▽適正薬価▽適正使用▽総量規制――の3点を例示した。
適正な薬価の設定に当たっては、▽費用対効果の考慮▽競合品(二番煎じ)の扱い▽承認に当たっての規制緩和――などの論点を提示。薬剤の適正使用については、▽有効例に対して必要最小限度に▽無効例に対して使用を控える、打ち切る▽保険査定の厳格化――を挙げた。総量規制については、▽高額療養費の見直し▽年齢制限の設定――の必要性に触れた。