オカダ酸群標準液の認証標準物質
産業技術総合研究所は4月5日、貝毒を液体クロマトグラフ質量分析計などの分析機器で分析する際に用いるオカダ酸群(オカダ酸とジノフィシストキシン-1)標準液の認証標準物質を開発し、4月6日から委託事業者を通して頒布を開始したことを発表した。
画像はリリースより
今回の開発は、同研究所物質計測標準研究部門バイオメディカル標準研究グループの山崎太一研究員、川口研主任研究員、高津章子副研究部門長と、水産研究・教育機構(FRA)中央水産研究所水産物応用開発研究センター衛生管理グループの渡邊龍一主任研究員、松嶋良次主任研究員、及川寛グループ長、同センターの鈴木敏之センター長によるもの。
アサリやホタテガイなどの二枚貝は、日本をはじめ世界各地で食用水産物として重要な地位を占めているが、有毒プランクトンの摂取が原因で体内に貝毒を蓄積し、食中毒を引き起こすことがある。国内では、貝毒による食中毒を防ぐために厚生労働省が規制値と貝毒検査法を通知し、規制値を超える貝類の販売を禁止するとともに、農林水産省の通知等により、生産海域における貝毒の監視や貝毒発生時の出荷の自主規制が行われている。
高品質な標準物質の安定供給に取り組む予定
下痢性貝毒であるオカダ酸群の検査は、これまでマウス毒性試験が実施されてきたが、近年では動物愛護の観点や成分ごとに毒を検出できる利点から、機器分析による検査の導入が世界で普及しつつある。また、生産者による適切な出荷管理や、水産物の輸出拡大、市場に流通する食品の安全性確保の観点からも国際基準に基づいた検査を行う必要性が高まっている。このような中、国内においても2015年3月に、下痢性貝毒オカダ酸群の検査では機器分析を導入することが厚生労働省より通知されていた。
認証標準物質は、FRAが開発中の貝毒を産生する藻類の大量培養技術と貝毒精製技術を利用して高度に精製されたオカダ酸とジノフィシストキシン-1を製造し、それらを用いて調製された溶液の濃度を産総研が正確に決定することにより開発。濃度の決定は産総研が中心となって開発し、普及を進めている核磁気共鳴を利用した有機化合物の定量分析法(定量NMR法)により行った。
今回開発した認証標準物質は、「NMIJ CRM 6206-aオカダ酸標準液」と「NMIJ CRM 6207-aジノフィシストキシン-1標準液」として4月6日から委託事業者を通して頒布を開始する。また、産総研とFRAの両者は、今後さらに濃度決定法や精製法の高度化を進めるとともに、品質の高い標準物質を安定供給できるよう取り組む予定としている。
▼関連リンク
・産業技術総合研究所 プレスリリース