2010年の移植法改正以降、増加傾向にある心臓心移植数
国立循環器病研究センターは3月30日、成人期の先天性心疾患による末期心不全例に対し、心臓移植を実施したことを発表した。移植手術したのは、内科的・外科的治療やペースメーカー治療にもかかわらず慢性心不全による重症心不全により心臓移植の適応となり、植込み型補助人工心臓による心臓移植ブリッジを行っていた修正大血管転位症患者で、日本では初めての例。
日本では1999年に初めての脳死下提供による心臓移植が行われて以来、拡張型心筋症や拡張相肥大型心筋症などに対して心臓移植が実施されてきた。2016年3月20日現在全国で273例の移植があり、うち78例(約29%)を国循が施行している。2010年の移植法改正以降、心臓移植数は増加傾向にあるという。
心臓レプリカを作製、移植手術のシミュレーションを施行
心臓移植の対象となる疾患としては、拡張型心筋症や拡張相肥大型心筋症が3/4を占めており、先天性心疾患等はごく少数とされている。今回移植を行ったのは50歳代男性で、30歳代で心不全を発症し、先天性心疾患を指摘されていた。その後再度心不全となり、国循で心臓弁の置換術を施行したという。
この患者には心不全に対する薬物治療が行われたものの、心不全が悪化し、50歳代には強心剤による治療が必要となり、心臓移植の適応と判定され、日本臓器移植ネットワークに心臓移植希望登録を行っていた。登録後、薬物治療の限界として、植込型補助人工心臓装着術を施行し、心臓移植待機を続けていたという。
2016年に入り、ドナー情報があり、心臓移植を施行。この患者は心臓の形態が通常と異なっていること、再々手術であり癒着が高度であることなどから周到な準備と正確な手術が必要であり、心臓および大血管系について患者のCT画像データをもとに心臓レプリカを作製して、移植手術のシミュレーションを行ったという。移植後の循環動態は安定しており、免疫抑制療法を行いながら、リハビリテーションを進めている。
今回の心臓レプリカを用いた移植の検討により、心臓の形態に応じた移植手術を安全に行えることを具体的に提示された。また、末期心不全患者に対しても心臓移植が行えることを示されたものであり、日本において心臓移植が定着し、成熟してきたことの1つの表れとして、今後の発展に期待が寄せられる。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース