タンパク質「SIK3」と変形性関節症の関係に着目
京都大学は3月31日、プテロシンBという物質が変形性関節症に効果があることを明らかにしたと発表した。この研究成果は、箭原康人大学院生(京都大学 CiRA/富山大学)および妻木範行教授(京都大学 CiRA)ら研究グループと、竹森洋プロジェクトリーダー(医薬基盤・健康・栄養研究所)らとの共同研究によるもの。同成果は、英科学誌「Nature Communications」オンライン版に3月24日付けで掲載されている。
画像はリリースより
軟骨が変性することで起こる変形性関節症は、加齢や関節への過剰な負荷、メタボリックシンドロームなどがリスク要因とされる。一方、加齢によって関節軟骨が薄くなること、加齢とともに変形性関節症の患者の数が増えることは知られているが、軟骨が薄くなることが変形性関節症の原因となるかは不明だった。
これまでの研究では、変形性関節症の軟骨細胞が通常の軟骨細胞に比べて、より成熟した細胞(肥大軟骨細胞)の性質を持っていることがわかっていた。妻木教授らのグループは、 Sik3遺伝子を欠失したマウスでは、軟骨細胞の成熟が抑制され、軟骨細胞が増えることを見いだしており、今回の研究では、SIK3と変形性関節症との関係に着目した。
変形性関節症治療薬のリード化合物として期待
研究グループは、薬剤誘導によりSik3遺伝子を欠失するマウスを作製。Sik3を欠失したマウスでは関節軟骨が厚くなり、変形性関節症の進行が抑えることに成功した。また変形性関節症が起こりやすくなる手術を行ったところ、Sik3欠失マウスは、 Sik3遺伝子を持つマウスと比較して変形性関節症になりにくかったという。
この結果を受け、Sik3のシグナル伝達系を抑制する化合物をスクリーニングしたところ、植物成分由来の化合物ライブラリーの中で、プテロシンBがSik3の活性を抑制することが判明。変形性関節症モデルのマウスの関節にプテロシンBを注入すると、変形性関節症の症状をおさえられたとしている。
今回の研究成果により、変形性関節症の治療ターゲットとしてSIK3が有用であることが明らかになった。研究グループは、今後プテロシンBが変形性関節症の治療薬のリード化合物になることが期待されると述べている。
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