NCNPとの共同研究で開発、筋機能の改善
日本新薬株式会社は3月30日、国産初の核酸医薬品となるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療剤「NS-065」の米国での前期第2相臨床試験について、3月25日付けで米国食品医薬品局(FDA)へ新薬治験許可申請を行ったと発表した。
日本新薬と国立精神・神経医療研究センター(NCNP)との共同研究によって見出された同剤は、DMDに対する治療効果が期待されるモルフォリノ化合物で合成されたアンチセンス核酸と呼ばれる核酸医薬品。ジストロフィン遺伝子の一部の遺伝情報を読み飛ばすことにより(エクソン53スキップ)、筋機能の改善が期待できる。エクソン53スキップに応答する遺伝子変異を有するDMD患者を対象に開発された。
同剤はDMD治療における重要な選択肢として期待されており、国内では2015年10月に厚生労働省より先駆け審査指定制度の指定を受け、2016年1月から第1/2相臨床試験を開始。また、NCNPで実施された医師主導の早期探索的臨床試験(平成25年6月~平成27年3月)で良好な結果を得たことから、今回、米国での前期第2相臨床試験を開始するに至ったという。
ステロイド剤以外に有力な治療法が存在しないDMD
エクソン・スキップ治療とは、アンチセンス核酸と呼ばれる短い合成核酸を用いて、遺伝子の転写産物(メッセンジャーRNA)のうち、タンパク質に翻訳される領域(エクソン)の一部を人為的に取り除くことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正する治療法。正常なジストロフィンタンパク質に比べると、その一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンタンパク質が発現し、筋機能の改善が期待できるという。この治療の対象となるエクソンは、患者の変異形式に応じて異なり、同剤はエクソン53を対象としている。
DMDは、男児に発症するもっとも頻度の高い遺伝性筋疾患で、ジストロフィンと呼ばれる筋肉の細胞の骨組みを作るタンパク質の遺伝子に変異が起こり、正常なジストロフィンが作られなくなることで、重篤な筋力低下を示す疾患。現在、その進行を遅らせるステロイド剤以外に有力な治療法は存在せず、新たな治療法の開発が期待されている。
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・日本新薬株式会社 プレスリリース