65%に融合型がん遺伝子、最多はDUX4-IGH
日本医療研究開発機構(AMED)は3月29日、AYA世代(adolescence and young adult、15~39歳)の最も多いがんのひとつであるB細胞性急性リンパ性白血病(B-cell acute lymphoblastic leukemia:B-ALL)の約65%について、その原因となるがん遺伝子を解明したと発表した。
画像はリリースより
同研究は、AMEDの革新的先端研究開発支援事業(LEAP)とAMED次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム(P-DIRECT)の連携よるもの。
AYA世代のがんの多くは原因が不明で、中でもB-ALLはAYA世代に最も頻度の高いがんの一種だが、9割近くが原因不明なままだった。研究グループは、AYA世代のB-ALL白血病細胞を次世代シーケンサーにより網羅的に解析することで、B-ALLの約65%の症例が何らかの融合型がん遺伝子を有することを発見。そのうち、最も多く(約16%)見られたのは全く新しいがん遺伝子DUX4-IGH融合遺伝子で、2番目に多いものはZNF384融合遺伝子、3番目に多いものは新規MEF2D融合遺伝子だったという。
新しい治療薬開発や予後予測診断法の実用化に期待
DUX4はこれまで発がんとの関わりは知られていなかった遺伝子だが、AYA世代B-ALLにおいては、DUX4遺伝子の後ろ側が削れたうえで免疫グロブリン遺伝子H鎖(IGH)座に挿入されて融合し、大量のDUX4-IGHの融合タンパクが産生されることが新たに明らかになった。この融合タンパク質は強力な発がん能を獲得しており、DUX4-IGH融合タンパクをネズミのB細胞で産生させるとネズミは白血病を発症すること、またDUX4-IGHを持っているB-ALL細胞株でDUX4-IGHの発現を低下させると細胞死が誘導されることも確認された。さらに、DUX4-IGHあるいはZNF384融合型がん遺伝子を有する白血病は予後良好群に属し、MEF2D融合型がん遺伝子陽性の白血病は予後不良群に属することも明らかになったとしている。
今回の研究は、これまで発症原因が不明であったAYA世代白血病の多くの症例における原因を解明しただけでなく、その治療法・予後予測マーカーの提案へとつながる新たながん遺伝子を発見した。この発見はAYA世代B-ALLに対する新しい分子標的治療法開発や、同疾患の予後予測診断法の速やかな実用化につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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