予防薬望まれる条件、安全・安価・内服
大阪市立大学は3月29日、既存医薬品であるリファンピシンに、認知症を予防する広い作用があることを突き止めたと発表した。この研究は、同大学医学研究科脳神経科学の富山貴美准教授らのグループが、金沢大学、富山大学、米国ノースウェスタン大学と共同で行ったもの。研究成果は、英国の神経学雑誌「Brain」に同日付けでオンライン掲載された。
画像はリリースより
認知症にはアルツハイマー型、前頭側頭型、レビー小体型などがあるが、その原因タンパク質はそれぞれアミロイドβ、タウ、αシヌクレインとさまざまあるが、これらのタンパク質が脳内でオリゴマーを形成し、神経細胞の機能を障害することで、病気が発症すると考えられている。
最近では、認知症は治療よりも予防に重点を置くべきであるという考えが広まっている。世界では今、発症リスクの高い未発症者(老人斑陽性の健常者や家族性アルツハイマー病家系の家族)にAβ抗体を投与する予防介入の臨床試験が始まっている。しかし、これまでの治療薬は予防投与を前提として開発されたものではなく、費用・副作用・投与法などの点で問題を抱えている。認知症を予防するには、長期にわたって薬を服用する必要があるため、予防薬には、安全・安価・内服可能で、できれば一剤で認知症の様々な原因タンパク質によるオリゴマーに作用できることが望まれる。
2025年に700万人超、予防薬の開発に期待
研究グループは、結核やハンセン病などの治療に使われてきた抗生物質リファンピシンに、アミロイドβ、タウ、αシヌクレインによるオリゴマー形成を抑える作用があることを発見。リファンピシンをアルツハイマー病や前頭側頭型認知症のモデルマウスに1か月間経口投与すると、脳のオリゴマーが減少し、シナプスが回復して、記憶障害が改善されたという。
リファンピシンは1960年代からある薬で、副作用に関する情報も蓄積されており、今ではジェネリック医薬品として安価に供給されている。一部の患者で問題となる肝障害や薬物相互作用の副作用さえクリアできれば、未だ有効な治療法がない認知症に対して、安価で内服可能なリファンピシンによる予防が可能になるかもしれない。また、今回の研究を契機として、より安全でより有効な新しい予防薬の開発が進むことも期待されるとしている。
なお、国内の認知症患者数は、2025年には700万人を突破すると予想されており、予防薬の開発は国の医療費負担を軽減するのに役立つだけでなく、患者とその治療・介護に携わる人々の精神的・肉体的負担、それによる社会的損失の軽減にもつながる、と研究グループは述べている。
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