主要製品は堅調 ベルソムラは対前年3倍増
MSD株式会社は3月24日、都内でプレス向けの事業説明会を開催。2015年度の日本国内での売り上げが対前年比9.7%マイナスの3400億円であることを発表した。減収の原因として、同社のトニー・アルバレズ代表取締役社長は「ジェネリックの浸透」と「経口治療薬を中心とした肝炎治療薬のトレンドの変化」を挙げた。
トニー・アルバレズ代表取締役社長
一方、主要製品は堅調に推移。「ジャヌビア」については心血管系での安全性が評価されるなどもあり、売上の低下傾向がストップ。ほぼ前年並みの売上だった。ほか、「ベルソムラ」は対前年で3倍以上の売上になるなど、大きく成長している。「世界に先駆けて発売されたマリゼブやベルソムラなど、日本のドラッグラグは解消されつつある」(アルバレズ氏)
しかし、アルバレズ氏は製薬業界の環境は厳しさを増している、と警鐘を鳴らしている。「3年連続の薬価改定や市場拡大再算定など、将来の予見性が脅かされる環境になってきている」(アルバレズ氏)
設立125年&10カ年戦略計画の折り返しという「重要な1年」
2016年に注力する分野・薬剤として、アルバレズ氏は「糖尿病領域の成長拡大」、「ワクチンおよびベルソムラの最大化」、「抗PD-1抗体『ペムブロリズマブ』と、C型慢性肝炎治療薬『エルバスビル/グラゾプレビル』の上市成功」と具体例を挙げた。子宮頸がんワクチンについては「世界各国で患者さんが減少するなかで、日本で(患者数)が増加しているのは看過できない」(アルバレズ氏)と引き続き、積極的な働きかけを続けていくことを表明した。
続いて発表した同社副社長でグローバル研究開発本部長の白沢博満氏は医療を大きく変える画期的新薬として、前出の「ペムブロリズマブ」、「エルバスビル/グラゾプレビル」とともに、アルツハイマー病治療薬「MK-8931」を挙げた。「MK-8931」はアミロイドβ産生を抑制するBACE阻害薬で「疾患修飾薬」として開発中で、現在2つの第3相国際共同治験に参画中だ。「2015年度はすべてのパイプラインにおいて、スケジュール通りに進んだ。国内でも先駆け審査指定項目に指定されるなど、がん治療において、エポックメイキング的存在であるペムブロリズマブへの期待は大きい。現在も膀胱がんや食道がん、進行性固形がんなど複数のがんの適応追加に向けて開発を進めている」(白沢氏)
グローバルでは設立125周年というメモリアルイヤーであるのと同時に、国内では2010年に制定した10カ年戦略計画の折り返しの年である2016年。同社が掲げるビジョン「2020年までに日本で最も優れたヘルスケア企業となることを目指す」ために、2016年はMSDにとって重要な1年といえそうだ。
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