腸管選択性のヒト化モノクローナル抗体「Entyvio」として承認済
武田薬品工業株式会社は3月22日、オランダ・アムステルダムで開催された2016年欧州クローン病・大腸炎会議(ECCO)年次総会において、約3年間にわたりvedolizumabの投与を受けた中等度から重度の活動期潰瘍性大腸炎患者における臨床的改善について検討するGEMINI LTS(長期安全性)試験の中間解析結果を公表したと発表した。
Vedolizumabは、腸管選択性のヒト化モノクローナル抗体として「Entyvio(R)」の製品名で2014年に欧州および米国において承認。また、現在48か国で承認されている。同剤は、従来の治療薬あるいは抗TNFα抗体による治療に対し効果不十分、効果減弱がみられた、もしくは不耐性である成人の中等度から重度の活動期潰瘍性大腸炎およびクローン病の治療剤として、同時に承認を受けた唯一の生物学的製剤である。
最長152週の投与を受けた潰瘍性大腸炎患者における臨床的改善を報告
現在進行中の非盲検長期投与試験であるGEMINI LTS試験の中間解析では、4週ごとにvedolizumabの投与を受けた中等度から重度の活動期潰瘍性大腸炎患者のうち73名について解析を実施。これらの患者は、GEMINI I試験の導入時の用量にて投与6週時点で効果が現れていることが確認された後、維持期において8週ごと、または4週ごとにvedolizumabによる投与を受け、計152週間にわたる治療を完了した。全体で、8週ごとに治療を受けた患者群の53%、4週ごとに治療を受けた患者群の39%に寛解がみられ、過去に抗TNFα抗体の治療に対し効果が得られなかった患者群の寛解率(それぞれ48%と29%)と比較して、過去に抗TNFα抗体治療を受けたことのない患者群において、高い寛解率(それぞれ57%と43%)が示されたという。
もう一方の解析は、同じくGEMINI LTS試験の患者群を対象にした後ろ向き調査で、1年以上4週ごとにvedolizumabの維持療法を受けたクローン病患者23名および潰瘍性大腸炎患者39名における粘膜治癒および大腸の異形成の発生数について検討し、観察期間の中央値である2.7年以降に実施された82件の大腸内視鏡検査データが解析された(クローン病32件、潰瘍性大腸炎50件)。Mayoスコアは、潰瘍性大腸炎の活動状態を評価する指標であり、スコア0は活動状態が最小、スコア1は軽度の活動状態(軽度の発赤や血管透見像の減少)を示す。潰瘍性大腸炎では、Mayoスコア0または1を内視鏡的治癒として定義し、クローン病では、内視鏡判定による潰瘍病変の著しい改善を部分的治癒、潰瘍の消失を完全な治癒として定義した。大腸内視鏡検査により、クローン病の44%で完全な粘膜治癒が見られ、38%で部分的治癒を確認。潰瘍性大腸炎では、大腸内視鏡検査にてMayoスコア0が54%、Mayoスコア1が20%で観察されたという。
同社は今後も、利用可能な最良の手段とデータを提供するため、vedolizumabの長期的な有効性と安全性の研究に取り組んでいきたいとしている。
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・武田薬品工業株式会社 ニュースリリース